第17話 魔法使いエルフ

【第17話】魔法使いのエルフ



 うっすらとしか見えないが、確かにそれは居た。醜悪な顔をした奴らが……


 アサシンゴブリン Lv25 種族:魔物

スキル

・隠密

・短剣中級者


【隠密】

足音や気配を少しだけ消すことできる

【短剣中級者】

短剣の扱いが上手くなり、頭の中で思い描いた動きができる


 数は10体。手に持っているナイフを舌舐めしている。

魔物がこちらを小バカにしたような目で涼たちを見つめていた。


(隠密……それで気配が……それにこいつらレベルが高いな……)


 涼のレベルとの差は5あるが、数が多い。しかし、今回は1人で戦うわけではない。イランが居る。2人で戦えばこいつらなんて楽勝だ。そう思っていたが。


「おい構えろ。来るぞ」

「いや~それなんだけど……僕、あの戦い以降何だか力が不安定なんだよね。あの時みたいな力出ないかも」

「っ!?」


 そんな事を言ったあとに「ごめん」と謝るイラン。

それに対しキレそうになったが、よくよく考えば、その力を封印したのは自分自身だと思った涼は溜め息をついた。敵は今にも襲い掛かってきな状況。

 チラッと横の道に目をやる。


(これは逃げた方が良さそうだな……)


「キキキィー-!!」


 その瞬間、魔物の1匹が涼たちに向かってとびかかる。

それを見た他の魔物たちが、1匹また1匹と続くように左右、中央に別れ走り出す。


「っく!」


(すぐに【波動】を……いや間に合わない!)


 魔法を溜めている時間はなかった。仕方ないと剣を構え迎撃の構えを取る。


「目を閉じてください」

「っ!?」


 敵はもう目の前。思いっきり剣を凪払い、少しでも隙を作ろうとした時だった。何処からか声が聞こえる。その声に従うように涼は目を閉じた。


『『フラッシュ』』


 辺り一面に、目が失明するのではないかと思う程の光が放たれた。その光を目で受けた魔物たちは、目を手で覆い悶絶していた。


「こっちです」

「ねぇ、涼。何にも見えないんだけど、どうしよう」


 目を閉じ忘れたのか。イランは魔法の餌食になっていた。呆れつつもイランの手を引っ張り、その場から離れることに成功した。



ー--------------------



「危ないところでしたね」


 助けてくれたのはローブ姿に、フードを被っている小柄の人? だった。

手には、老人が持ってそうな杖を持っており少し緑色に輝いていた。

背は小さく145あるかないかの身長だった。声からするに女だろう。


(何か幼さが残っている声だな。まさかと思うが子供か?)


「あ、失礼しました。顔も見せずに」


 まじまじと分析しているのがバレたのか。少女はフードを取り、顔を見せた。


「……」


 そこには、ピンク色をした長い髪に、子供のような幼い顔つきをした人だった。


「私、セラフィーです。えっとお二人は……」

「あ、ああ。俺は涼、水原涼だ」

「いやーひどい目にあった……あ、僕はイラン。それにしても君、僕が見えるの?」

「え? はい。あの失礼ですが、あなたは……身体が全身水色ですし、どう考えても人間じゃあ……」

「気にするな。基本どうでもいいやつだ」

「ひどくない!?」


 そんなことより気になったのは、彼女の耳だ。

涼の倍はの長さがあった。涼は【情報】を使い確認する。


 セラフィー Lv25 種族:エルフ

スキル

・魔力増強

・詠唱短縮

・魔法倍化


【魔力増強】

魔法の使用回数が増加する

【詠唱短縮】

魔法の詠唱時間が短縮される

【魔法倍化】

魔法の威力が2倍になる


「……」


 初めに見た時、何となくだがただの人間ではないことは分かった。だがその正体がエルフだとは思ってもみなかった。

ゲームやアニメでしか登場しない種族。


(まぁイランの姿もそうか……)


 初めて見る生身の人型の種族。しかもエルフ。ついまじまじと見てしまう。


「あの……」

「ああ、悪い」


 流石に見すぎたのか。セラフィーは顔を背ける。


(それにしても子供でも、こんなにレベルが高いんだな……エルフだからか?)


 こんな小さな見た目だが、レベルは涼とほとんど変わらない。それだけでも驚いたが、それともう一つ驚いたのが。


(こんなに魔法特化のエルフってなんか新鮮だな……)


 ファンタジーで出てくるエルフの特徴は背が高く、運動神経が抜群、そして魔法より弓を愛用するイメージが強い。だが、セラフィーの特徴はそのどれとも合っていなかった。


「まぁさっきは助かった」

「いえいえ。困っている人を助けただけです。大したことはしてませんよ」

「涼~それより出口探そうよ~」


 ここは、湿気が多くじめじめしているし居心地が悪い。そんな環境にイランは耐えきれないご様子だった。


「そうだな……」

「あ、それだったらそこの角を右に行ってまっすぐの所にありますよ」

「え? 本当! だってさ涼! 早く行こうよ!」

「ああ……それよりお前はどうするんだ?」

「私のことはご心配なく。もう少しこの場所を探索しますので」

「そうか」


(この場所は魔物も強いし危険だと思うんだが……いや、さっきの様子を見る感じ大丈夫そうだな)


 セラフィーは小さくお辞儀をするとその場から消えてしまった。

そして涼たちは、セラフィーに言われた道を進み出口をめざし歩き始めた。



ー--------------------



 セラフィーに言われた道を歩き始めて数分。出口を見つけるどころか完全に迷子になっていた。


「涼~また行き止まりだよ……」

「あいつ、もしかしてデタラメ言ったんじゃないだろうな……」


 そんな疑問が生まれる。涼たちは言われた通り、角を右に曲がってからまっすぐ進んでいた。

しかし出口は無く、代わりにあったのは立ちふさがる岩の壁だった。


「仕方ない。引き返すか」

「もう僕、この場所限界なんだけど……」

「……っ」


 来た道を引き返そうとした時、遠くから悲鳴のような叫びが聞こえた。


「っ……聞こえたか?」

「うん。聞こえた」

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