第2章 冒険の続き

第15話 初戦から!?

【第15話】初戦から!?



 何も知らなければ、何も関わらなければ、こんな気持ちになることなんてなかった。

でも……知ってしまった。興味のない振りをしていれば、心が痛まずに済んだのに……

 どこで選択を間違ったんだろう。そんなことを思いながら毎日を過ごすことは俺にとって、ただの地獄でしかなかった……



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水原涼 Lv30

イラン 不明


 激闘を繰り広げた涼とイランは、傷が癒えるまでの1週間は【ソリダス】の村で滞在していた。


「はい。これ薬草だよ」


 イランが拾ってきた薬草と呼ばれる草をすりつぶすと、イランとの戦闘で傷ついた部位に塗る。あの戦闘の後、涼は3日は目を覚まさなかったらしい。その間、涼の看病をしていたのは他でもないイランだ。


「本当にもう大丈夫なの?」

「ああ……もう大丈夫だ」


 薬草のお陰なのかそれとも、この世界に来たせいなのか。はたまたレベルが上がったのか分からないが、あんなに傷ついた身体は1週間でほとんど治っていた。

そのお陰で今日には、旅を再開できるまで回復していた。


(現実にいた頃よりは治りが早いな……この世界の影響か?)


「ねぇ、これからどこ行くの?」


 出かける支度をしている途中に、イランが質問してくる。


「さぁな……適当に歩ければそれでいい」

「え……もしかして涼って計画性ない?」

「黙れ……」


 計画性も何も涼にはこの世界の土地勘も地図もない。

どの方角に進めば町や村があるかなんてものは把握していない。


(人が居る街に行ってみたいな……)


 この世界を歩き回ればそれでいいと思っていた涼だったが、この世界に来てからは野宿だったため、久しぶりにベッドで寝たり、風呂に入りたいと思い始めていた。


「行く宛無いなら【アルサンディア】に行ってみない?」


 どの方角に向かって歩き始めようかと考えてる最中に、イランがそんな提案をしてきた。名前からするに何処かの街だろうか。


「アルサンディア? 何だそれ……」

「え、知らない? おかしいな……一番有名な街って聞いたんだけど……まぁいいや」


 それからイランは【アルサンディア】という街の説明をし始める。


「【ソリダス】によく来てた商人がその街から来てたんだよ。その時に色々教えてもらったんだけど何でもこの国で一番でかい街らしいよ。ちなみに僕はこの村から出たことないから行ったことない」

「じゃあ道わかんないだろ……」

「大丈夫。ちゃんと教えてもらったから。ここから東北に進んで【流山】という山を登った先にあるらしいんだ」


 そう説明するイランの目はキラキラしていた。

どうやら、その【アルサンディア】という街に行ってみたいらしい。正直な話、イランの話を聞いた涼もその街に興味を持ちはじめていた。


「で? どうするの?」


(行く宛もないし、行ってみるか……)


「とりあえずそこを目指すか」

「やったー!」


 こうして、旅の続きを再開した涼とイランは、村を出て草原が広がる大地に向かって歩き始めた。目指す目標地は【アルサンディア】どんな街なのか涼は若干ワクワクしていたが、顔には出さないようにしていた。


「いや~旅なんて初めてだから楽しみだな~」


(俺は独りで旅をしたかったんだが……まぁいいか)


「そう言えばさ。涼って結局どこから来たの?」


 歩いて数分が経った時、イランから質問が飛んでくる。


「お前、あの村でも同じ質問したろ……」

「あの時、曖昧なこと行って逃げたじゃん」

「別に逃げた訳じゃ……はぁ……言ってもお前じゃ分かんないぞ」

「別にいいよ!」


 高らかに返事をするイランだったが、涼が「日本」と教えると帰ってきたのは「え? どこそれ?」だった。


「だから言っただろ……」

「まぁまぁいいじゃん。そうやってお互いを知っていこうよ。それで? そこってどんなところなの?」


 その問いには少し戸惑ったが、自分の思ったことを口にした。


「特に面白くもなく、つまんない所だ」

「ふーん」


 イランはそれ以上追及はしてこなかった。これ以上は踏み入れてはいけないと思ったのだろうか。


「ところでさ。さっきから大きな何がこっちに向かってきてるんだけど何あれ?」


 イランが指差す方角を見ると、かすかに見える。赤い何が飛んでいた。


「お前あれが見えるのか?」

「うん。えっとね羽が生えてて、いかつい顔してる。あと特徴的なのはかな」


 どうやらイランは目が良いらしい。これも魔物になったせいだろうか。だが、それよりも気になったことをイランは言っていた。


「おい。今鱗って言ったか?」

「あ、加速した」


 嫌な予感した涼のその考えは的中した。はるか遠くに居たはずのそれは、一瞬で涼たちの近くまで接近してきていた。


 バサッバサと翼を羽ばたかせている音が耳元でいやという程聞こえてくる。

そして、ズシン! と地面に降りると「グルルルル」とよだれを垂らし、こちらを見つめている。


(おいおい……)


 ワイバーン Lv50 種族:魔物

スキル

・ドラゴンの鱗

・火炎袋

・部分強化


【ドラゴンの鱗】

物理・魔法を大幅に軽減する

【火炎袋】

身体の中で火を溜めることができる


 ファンタジーの世界で、その名を知らない者は居ないのではないのだろうか。

【ドラゴン】名前からするに、低級のドラゴンっぽいがその迫力と覇気は人を恐怖に落とすのは十分だった。

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