第2話 魔物との戦い

【第2話】魔物との戦い



 この場所を探索して数時間が経過した。

それを証拠に明るかった空に赤みがかかる。どうやらこの世界にも朝と夜が存在するらしい。


 水原涼 Lv5 種族:人間

スキル

・情報

・駿足

・作成

・スキル説明


 ステータスを表示させ、現在の状況を確認する。あれから数時間、何もしてなかった訳じゃない。自分なりに色々調べていたのだ。


 それで分かったことが3つある。まず1つ目は、ここは現実じゃないということだ。最初こそ否定した涼だが、ここまで露骨に現実離れされていると色々察する。


 自分は異世界に入り込んだのだ。おそらく原因はあのゲーム。


(ライフドリームか……あれがこの世界に入れるトリガーに……漫画みたいな展開だ……)


 そして2つ目、レベルが上がる=スキルが増えるということではないということ。実際に今身についているスキルは【何をしたか】によって獲得したスキルだ。


 例えば【駿足】というスキル。これを獲得できたのはあの恐ろしい見た目をしていた【キラーラビット】から全速力で走って逃げたから。

 スキル【作成】は火をおこそうとして木の枝を集めてたら獲得したスキル。といったような何かしら行動を起こした時にスキルを獲得できるらしい。


 ちなみに【スキル説明】は名前の通り、

所持している自分と相手のスキルがどんな効果なのかが

確認することができる。


【情報】

自分・相手の名前、レベル、種族、スキルを確認することができるスキル。

【駿足】

スピードが少し上がるスキル。

【作成】

自分が思い描いた物のレシピが頭の中に浮かんでくるスキル。

【スキル説明】

現時点で習得しているスキルの効果を知ることができるスキル。


 現時点でのスキルの説明はこんな感じ


 そして最後の3つ目はレベルの必要性。

ゲームのレベルというのは一般的に、プレイヤーが強くなるためにするものだ。では、どう強くなるのか。それはゲームによってそれぞれだが、普通は力や体力、スピードが上がる。


 それはこの世界でも同じらしい。レベルが1上がってからというもの身体が軽くなるのを感じる。

 先ほど軽くジャンプしたら2メートル近くも飛ぶことができた。おそらく攻撃力や防御力、スタミナとかも上昇しているかもしれない。


 レベル上げは魔物を倒さなくても上がる。何か行動しただけでも上がるらしい。しかし、既に行動だけではレベルが上がらなくなってきている。


(流石に魔物を倒して経験値を得ないと駄目か……)


 しかし、ここに生息している魔物は強すぎる。最初に見た魔物のレベルは12。まず戦っても負けるだろう。


 だが1つだけ、そんな魔物と差別化できることがある。

それは武器や防具だ。でもそれはどうやって作るのか? 答えは手にいれたスキル【作成】だ。これを手にいれた影響か、武器を作りたいと思うと、その作成手順が頭に浮かんでくる。材料や、形などが。


(とにかく武器を作ろう。素材は木でいい。石を砕く道具は持ってないからな。でも木なら、レベルも上がって力が上がっているから素手で少しずつ削ることができる)



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



(よし、これでいい)


 そうしてできたのは小麦色をした剣道などの練習用として使われる木刀。RPGの武器の武器にしては上等と言えるだろう。


(これで、多少はまともになったはずだ)


 ブンブンと木刀を振ってみる。店で売っている木刀よりは強度はあると思う。近くにあった木に試し切りをしてみる。


 ガツン! という音が鳴り少し木の皮が剥がれる。


 (まぁこんなもんだろ)


 木刀を腰に差した時、腹がグゥ~と鳴った。

そういえばこの世界に来てから、まだ何も口にしてなかった。


(何か食べ物探さないとな)


 腹が減ってはなんとやらと、食べられる物を探しに歩き始めようとした足を止める。


「…………」


【キラーラビット】スキル【情報】で名前を確認する限り、あの時の魔物がキョロキョロと辺りを見渡していた。獲物を探しているのだろうか? いや、今はそんなことはどうでもよかった。


(逃げるか…いや……)


 止まっていた足を1歩また1歩と前に出す。

それに気づいたのか。こちらに振り向き牙を剥き出しにした。


 戦ってみよう。そう決意する。先ほど魔物は倒さないとレベルは上がらないと思っていたが、どうやら武器を作ったときに上がったらしく、今はレベル8。絶望的なレベル差じゃない。


「キシャーーーーーー!!」


 こちらを発見したのか耳を覆いたくなるような雄叫びを上げる。その雄たけびに足が震えるのを感じる。

だが足踏みをし、それを無理矢理止める。


「さぁ来いよ」


 ゆっくりと構える。


(レベルは前と同じ12。大丈夫。行ける!)


 地面を蹴り仕掛ける。身体が軽い。今までの自分では、到底出来ない速度だ。100メートル走を走れば、世界最速の称号を貰えるだろう。


(レベルは俺より上だ。だが、こんな小さなウサギだ。1発叩き込めば致命傷だろ!)


 木刀を持った右手に力を込め、振り下ろすが、敵が目の前から消える。


 ビュン!


 頭上から殺気! 瞬時に木刀を横にし、ガードする。


(こいつ一瞬で上に!)


 目では追えない速度で飛び回っているせいで攻撃が当たらず、防戦一方状態だ。


(っ!)


 それでは駄目だとこちらから仕掛けようとした時、肩に激痛が走る。触るとグチョという感触があった。

 飛び回っている最中に蹴られ血を流したのだ。

ポタリポタリと血が垂れてくる。


(いつ蹴られた? っくそ!)


「キシャーーーーーーーー!!」


(飛びかかってくる。避けないと!)


 カチャ


「っえ?」


 足元にあった石につまずいた。


(ここで!? やばい!)


 脳裏に思い浮かぶのは食い殺される自分。


 死を覚悟し目を瞑った。……が、追撃が来ない。目を開け状況を確認する。


 ドン! と後ろで音がする。


 なんと、奇跡的に攻撃をかわすことができ、

敵は凉の後ろの木に激突し一瞬怯んでいた。


 すぐに起き上がり、その場から飛ぼうとする。

だが、その隙を見逃さない。


 飛ぶ瞬間、力任せに木刀を振り、敵の腹部にヒットした。当たった瞬間ミシっ! と鈍い音がし、後方に吹き飛ぶ。レベル差があるとはいえこちらには体重差がある。あっちが10キロくらいに対し、こっちは60キロ近くある。


 よろよろとよろけながら立ち上がるキラーラビット。

それを見てさらに追撃を仕掛けようとする。が、そのタイミングで涼の足が止まる。


 ズズーン!!


 前方の3本の木がキレイに横に倒れたのだ。突然の出来事に頭が追いつかない。それと同時にキラーラビットの後ろに壁のような現れる。


(そ、そうだ【情報】を……!?)


 キングキラーラビット LV20 種族:魔物

スキル

・共食い

・強靭な身体

・変異


【共食い】

同種を食べることで攻撃を上昇させる。

【強靭な身体】

通常種より防御力が上昇している。

【変異】

過激な環境で突如変化した形態。全てにおいて通常種を凌駕する。


 それは巨大な手で苦労して弱らせたキラーラビットを鷲掴みにし、口に運んだ。


「グギャアアアアアア!!!」


(3メートル? いや5メートルはある。これは……まいったな……)


 だが、不思議と震えや恐れはなかった。

それとは逆。彼は笑ったのだ。まるで、この状況を楽しむかのように。

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