第305話


 一方……道女は幸と共に動物の世話に精を出していた。

 

「あ~もう分かんないよ~……」

「言っておる場合か。もう祭りは土曜なのだぞ。何としても今週で追試を終わらせるんだ」

「まひには無理だよ~……」

「弱音を吐くな!」

「ひぇ~……」

 

 仲良さそうに勉強する二人の声が聞こえる。

 きちんと追試をクリア出来ると良いのだが……。

 

「ほーら、ご飯だぞ~」

 

 幸がそう言いながら、二匹の金魚――セレナとエルグランドの水槽に魚の餌を撒く。

 セレナとエルグランドはパクパクと口を開きながら、粒状の餌を美味しそうに食べる。

 

「いっぱい食べてね~」

 

 笑顔で水槽内の金魚にそう呟く幸。

 かなり手慣れた様子だ。

 

「次はノートちゃんだね。おいで」

 

 幸は手招きして、犬のノートを呼び。

 目の前に餌の皿を置く。

 ドッグフードを皿いっぱいに盛り付けてから、

 

「待て」

 

 幸は手を差し出し。

 

「お手」

 

 ノートは幸の手の上に置く。

 

「お座り」

 

 ノートはお座りし。

 

「いいよ」

 

 幸はそれを見てから、ノートに許可を出す。

 ノートは嬉しそうな顔で餌を食べ始めた。

 

「よしよし、いい子だぞ~」

「本当に手慣れてるんだね」

 

 道女は微笑みながら、幸にそう声を掛ける。

 

「はいっす!」

 

 幸は元気にそう返事した。

 昔は猫や犬に囲まれていた……と言っていたし、飼った経験でもあるのだろうか。

 

「幸ちゃんさ」

「どうしたんすか?」

「昔は犬や猫に囲まれてたって言ってたけど、もしかして飼ってたの?」

 

 道女の問いに、幸は頭を掻く。

 

「あー違うっすよ。私よく野良猫や野良犬と遊ぶのが好きで、子供の頃は路地裏に出入りしてたんすよ」

「そうなの?」

「はいっす。そこでよく餌とかあげてたんすよ。今はあんまりしてないすけど、ここは動物沢山いますし、その頃を思い出すっすよ」

 

 笑顔でそう答える幸。

 

「きっとその猫ちゃんやわんちゃんも、幸ちゃんの事大好きだったと思うよ」

「そうっすか? そう言われると照れるっすよ~」

「ホントホント! 幸ちゃんは凄いなあ」

 

 道女はそう言ってから、二人で笑いあう。

 

※※※

 

 勉強が始まって二時間が経過。

 何とかどの教科も四割は正解出来るようになったが……。

 

「もうまぢ無理……休憩しよ」

「まったくお主は根性が足りんぞ……」

「気分転換にアイドルバトルする?」

「断る」

「じゃあ言うな」

「それとこれとは別の話だ」

 

 秀未が腕を組みながらそう呟く。

 まあ確かにここでバトルしたら怒られそうだが……。

 けど気分転換したい……。

 もう勉強やだ……まぢ無理……。

 

「あーそれならあれしない?」

「あれとはなんだ?」

「やっぱり人の家行ってする事と言ったらあれじゃない?」

 

 そう。

 人ん家に来たら誰もがやる伝説の遊び……。

 

「探検」

 

 まひも何度か経験がある。

 お金持ちの友達の家で高そうなものを見て回ったり、かくれんぼしたり。

 愛知にいた頃は色々やっていたもんだ。

 

「お主……小学生か?」

「はあ!?」

 

 え……。

 この遊び小学生までなの!?

 この歳になってもやるもんだとばかり……。

 

「今時小学生でもやらなそうだが?」

「うう……秀未は感性がおばさんだからそうなるんじゃない?」

「吹き飛ばすぞ?」

「じゃあやろうよ。どうせもう疲れてやれないし」

「まったくお主という奴は……」

 

 秀未が呆れ顔で言う。

 

「んじゃ行こ行こ」

 

 まひはそれに構わず、部屋の外に出る。

 秀未もそれについてくる。

 

「まずは二階だね」

「……」

 

 まひは部屋を出てから辺りを見回す。

 二階は道女の部屋とトイレだけ……。

 

「二階は意外となんもないね」

 

 となると、一階に色々ありそうだ。

 まひ達はそのまま一階へと降りていく。

 

「そしたら一階かな」

 

 降りてからすぐに、ある部屋に向かう。

 工房っぽい一室。

 恐らく作業室か何かだろう。

 作業スペースや製図道具、沢山の工具が綺麗に整頓されている。

 道女の家は電気屋らしいし、ここで修理なんかをするのだろう。

 

「うわ凄いな……」

 

 そう呟くが、まひには勿論分からないものばかり。

 工具の知識など皆無だ。

 だが辺りを見回していると、

 

「む?」

 

 あまり乗り気では無かった秀未があるものを発見する。

 

「どしたの?」

 

 まひは声を漏らした秀未に問いかけ、その方を向く。

 

「何故ここにこんなものがあるんだ?」

 

 秀未が言っていたのは、確かにそこにあるのが不自然なものだった。

 そう、そこにあったのは……。

 

「これって……」

 

 道女の父の仏壇と、遺影だった。

 

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