虹色の羽根を生やした妖精たちの世界
太陽がサンサンと輝いている。
フロンティアと呼ばれる空の世界では
虹色の羽根を生やした妖精が
約100人ほど生活していた。
草原と山に囲まれて湖の近くに
集落ができていた。
動物界のリアルワールドと同じで
丈夫な木造の家々が立ち並ぶ。
柵に囲まれており、それぞれの家で
鳥や牛、羊を育てていた。
農園といってもおかしくはない。
羽根の色は男女関係なく、虹色であった。
妖精ということもあり、身長の高さも
どれも小さめだ。
「…ううぅ。」
アシェルは、口をおさえながら、
先々と進むルークにくっついて進む。
「アシェルさん、大丈夫ですか?
この道まっすぐ行けば、
クレアさんの家です。」
長く続くカーブがかかった道を指差した。
まだ気球の余韻が残るアシェルは、
気持ちが落ち着かなかった。
ルークは
小さなバックからレモンの飴を取り出した。
「これ舐めて、気分転換してください。
もうすぐ着きますから。」
「…飴。おう。さんきゅ。」
アシェルは気休めに飴を舐めた。
幾分、気持ちをシフトできた。
しばらく歩いて、
クレアの家の前に着いた。
ドアを開けようとした瞬間、家の中から
突然、大きな羊が駆け出してきた。
その後ろからクレアがシャラシャラと
音を出して飛んでいる。
「待ってー、止まってーーー。」
バタバタと騒々しかった。
ルークとアシェルの前で羊とクレアは
動き回る。
こちらの動きに気づいていない。
「待ってーー…って
どなたさま?」
羊の角をおさえて、やっとこそ
2人を見る
「お久しぶりです。
株式会社Spoonのルークと申します。
クレアさん、覚えていませんか?」
「…Spoon? あー、この間、
ラテをご馳走になったライオンの…。
スカウトされたけど、
丁重にお断りしたはずでしたが。」
暴れていた羊は鼻息を荒くした。
毛をかられた後だったようだ。
皮膚が丸見えだ。
「そうですね。
懲りずに来てみました。
ぜひどうかなと思って…。
信じてもらえるように
バンドのボーカルも連れてきたんです。」
ルークは肘でつんつんとアシェルを
押した。
「え、俺?
アシェルです。
えっと、自分は
ボーカル担当になりましたが、
もし良ければ、クレアさんも
バンドメンバーにいかがですか?」
クレアビジョンでアシェルは
カッコよく見えたらしい。
アシェルの周りを飛び始めて、
まじまじと見つめる。
「すいません、何か付いてます?」
クレアは目をキラキラさせていた。
「私も入っても良いですか?」
「いや、だから
お誘いに来たんですよって…。
え、急に?!
方向転換??
本当に良いんですか?」
喜怒哀楽を激しく、
ルークは、目を丸くして驚いた。
あんなに嫌がっていたのにと、クレアの様子を見るとアシェルの横から離れようとしない。アシェルは、少し煙たがっている。
「あー…そういうことですか。」
何かを察知したルーク。
腕を組んだ。
羊はどういうことだと
納得できない顔をしていた。
自分を放っておいて何をしていると
思っていた。
「何、どういうこと?」
アシェルにはよくわからなかった。
鈍感のようだった。
「交渉成立ということで、
お母様にお声かけしても
よろしいですか?」
「はい、全然、話してもらっていいですよ。
むしろ、早くして欲しいくらい。」
クレアはアシェルにゾッコンのようだ。
「はいはい。
私のことは眼中にないようですね。
でもまあ、アシェルさんを
連れてきて大正解でした。
ボスにいいお土産話ができますよ。」
ルークは一通り、クレアが会社の
バンドメンバーになってもらうことを
クレアの母フライヤに説明した。
フライヤは両手を叩いて喜んでいた。
ルークも安心してクレアを連れて行けると
思った。
早急に荷物をまとめて、玄関の前に立った。
「お母さん、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。
身体には気をつけてね。」
クレアはフライヤにハグをして立ち去った。
少し名残惜しかったが、大きな第一歩を
踏み出したようが気がした。
アシェルとルークは温かい目で見守った。
帰りが地獄だということを
忘れているアシェルだった。
「ちくしょーーーーーー。」
気球のバスケットの中、
アシェルの言葉がこだまする。
クレアは横でハートの目をしながら
喜んでいる。
ルークは一仕事終わったと安堵していた。
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