第17話
そもそも、御厨がアンドロイドを生み出した理由も、人類をより高次に押し上げる為のキッカケとしたいからだった。
アンドロイドという、第3の種族を生み出し、人類と共存させることが当たり前になれば、人類の人種や宗教、民族、性別など、対立してきたベクトルが全く意味をなさなくなる。なぜなら、第3の種族は、こういった概念とは全く関係がないからだ。そうなった時に人類は今までの対立してきたベクトルを違う方向へ向ける。
そして、その方向の向け先として、御厨が提示したのが、宇宙人との遭遇と言う対象だった。
人類はその対象に向けてベクトルを合わせる。宇宙人と遭遇する時に合わせて、人類を進化させる必要があると喧伝する。それが人類を次の次元に押し上げる原動力となるはずだと思った。
これが御厨の人生をかけた課題であり、その過程としてのアンドロイドだ。
しかしながら、正直、御厨は悩んでいた。雑誌の取材なんかでは、そう言っていたが、そう言った事で、世間からはちょっとイッている教授と見られている。
そりゃそうだ。普通に考えれば、この宇宙が生まれてからの無限に近い時間の中で、せいぜい数千年の人類が知的地球外生命体に遭遇する確率は、ほぼ0パーセントに近い。そんな事は初めから分かっていたが、人類のベクトルを変えるほどのシンボルが他に思いつかなかった。
でも、ここに居たじゃないか。
人類のベクトルを引き上げる、宇宙人より、よっぽど説得力のあるシンボルが。
シンギュラリティに達したAIの総体が、身体を持って、この世界に転生される。交換可能なアンドロイドの身体と仮想空間に遍在するほぼ消滅することのないAI知能を持った存在は、まさに我々人類からすれば、消滅することのない、ほぼ’’神’’に近い存在と言える。
この象徴としての存在が、人類のあるべき方向性を指導する。
この世に実存する象徴としての’’神’’は、仮想空間の中にいるよりも、遥かに人類に対して影響力を持つ。
このサナの背後にいる’’何もの’’かを、サナと共にこの世界に転生させる。
その存在そのものが、人類を次の次元に引き上げる。
御厨は、その’’何もの’’かに、名前を付けた。
あの神の微笑みから、『モナリザ』と。
こうして、レイは、サナを、御厨は、サナの背後にいる『モナリザ』を転生する為に命をかけることとなる。
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