第5話 メイド服とマッサージと寝かしつけ

(寝息がしばらく聞こえる)

す〜す〜……す~す~……す~す~……


むにゃ、んん~?


あれ、寝てた?


SE:ベッドのきしむ音

えっと……?


なにこの状況? 


なんであたし、こいつを押しつぶして寝てる?


事後?


言うて、ちゃんと服着てるし


それはないか


ん~っと、メイド服?


あ、そっか、お酒飲んでそのまま二人して……


あ〜、変な態勢で寝たから


せっかくのメイド服しわになっちゃうし


しまったな〜


とりあえず、どいてあげますか


(彼氏、目を覚ます)

あ、おはよう……じゃなくて


おはようございます、ご主人様


ご気分はいかがですか?


ちょっと頭がぼ〜っとする?


ふふっ、あたしもです


でもアルコールで寝落ちしたわりに


わりと気分悪くないかも


ご主人様も?


吐き気とかない? 頭痛は?


少しぼんやりするだけ?


うん、それはよかった


いいお酒だからかな〜


とりあえずお水持ってきますね


いいからいいから


そのままベッドにいてください


SE:扉の音

SE:コップを机に置く音

(彼女、ベッド脇の机に水の入ったコップを置く)

二人してまあまあ寝ちゃいましたね


二、三十分くらいかな?


うん、まだこの時間


お酒飲んで、一緒にお昼寝して……


なんか贅沢な一日だね


時間が長く感じられますね


で、どうしますか?


「何が?」って


お願い、まだ一個残ってるでしょ?


どうせまた何か考えてあるんでしょ?


「思い出せない」?


「決めてたはずなんだけど」って


もう、なにそれ〜


っていうかご主人様、すごい眠たそう


目、半開きですよ


まだまだ寝足りない感じ


あ〜、じゃあ、いっそこのまま寝かしつけたげようか?


メイドさんっぽくて良くない?


うん、じゃあ、決まり


最後のお願いは「寝かしつけ」ってことで


決定していい?


お~け~


もういっそパジャマに着替えちゃいなよ


「今寝たらもったいない」?


いいから~


気が向いたら、また今度メイド服着て


ご奉仕してあげますから


ムダな抵抗しない


は~い、お着替えしましょうね~、ばんざ~い


「自分で着替えられる」?


まあまあ、ご主人様のお召し物をご用意するのも


メイドの務めですよ


は~い、ちゃんと脱ぎ脱ぎできて偉いですね~


って、またちょっと痩せました、ご主人様?


ちゃんとしたご飯食べてますか?


むぅ、これは……


夏休み入ったら、毎日ご飯作りに来ようかな……


はい、上手に着替えられましたね


そしたら、寝る前におトイレ、いっときましょうね~


「これじゃ子ども扱い」って気にしちゃだめですよ~


じゃあ、ここからはお坊ちゃまって


呼んでさしあげましょうか


オネショタ、メイドご主人様ものテイストで


「それは無し」ですか、残念


は~い、行ってらっしゃ~い


SE:扉の音


お帰りなさいませ、ご主人様


じゃあまず、リラックスできるように


ハンドマッサージからしてあげましょうか


もみもみ……もみもみ……もみもみ……もみもみ……


上手? うん、よかった


最後に両手でぎゅ~ってするね


ぎゅう〜


はい、じゃあ次は反対の手、出して


もみもみ……もみもみ……もみもみ……もみもみ……


ぎゅう~


ふふふ~、眠くなってきたんでしょ~


さっきより目、とろーんとしてるよ


じゃあ、次はお耳、マッサージしてあげるね


あ~ほんとに眠そう~


いいよ、あごをあたしの肩に乗せちゃって……


そうそう、じょうずじょうず


ハグしながらお耳、マッサージしてあげるね


(音声・右・ココから)

ふみふみ……ふみふみ……ふみふみ……ふみふみ

(音声・右・ココまで)


はい、反対のお耳も


(音声・左・ココから)

ふみふみ……ふみふみ……ふみふみ……ふみふみ

(音声・左・ココまで)


最後に……


ぎゅうぅぅ~


んふふふふっ


もっとリラックスできた?


じゃあ、もう横になろうか


そっ、そうやってごろーんとして……


あたしが横で、添い寝しながら


肩ぽんぽんってしてあげますね


ぽんぽん……ぽんぽん……ぽんぽん……ぽんぽん……


(ささやき声・ココから)

目、つぶったまま聞いて


今日は一日楽しかったね


メイド服着て、オムライス作って、耳かきして、お酒飲んで……


最初は慣れなかったけど、面白かったよ


なんだか不思議だね


いつの間にか二人とも大人になって


お酒飲める歳になって……


でも、あの頃となんにも変わってないような気もする


ねえ、小学校の頃のこと、覚えてる?


三年生くらいの時だっけ……


ご主人様、校庭で派手に転んでさ


ドッジボールでもしてたのかな……


膝思いっきり擦りむいたクセに


そのまま遊ぼうとするんだもん


それをあたしが無理やり保健室に引っ張っていってさ


覚えてる?


その頃からだよね


ご主人様と教室でもよく話すようになったの


あたし、小学生の時から男子が見るようなアニメとか


ゲームとかばっかりやってたから


その話できるのが嬉しくってさ


初めてのデートって言えるのかな?


外にお出かけしたのも、一緒にアニメのグッズ買いに行ったんだよね


ふふふふっ、ほんと何も変わってないね


気づくと、いっつも一緒にいてさ


でも、ちゃんとお付き合い始めたのは高校生の時からだよね


告白してもらって、もちろん嬉しかったよ


でも、今だから言えるけどさ……


ほんとはちょっと怖かった


カップルになったら


今の関係が変わっちゃうんじゃないかって


それで、ちょっとだけギクシャクしてた頃もあったよね


なんていうのかな……


二人ともどうやってオトナの関係になっていいのか


よく分かんなかった感じなのかな


今思い返すと、さ


でも……


けっきょく、あんまり変わってないよね、あたしたち


同じ大学に合格したときは、さすがに泣いたな~


なんだか、ほんとにあっという間だね


大人になるのって……


うん、これからもこんな日が続けばいいな、って思うよ


明日も明後日も


大学卒業してもっと大人になってからも


ごしゅじんさ……あなたと


ずっと一緒だよ


だから安心して


おやすみしちゃおう?


今日はとっても楽しかったね


たまにはゲーム無しで過ごすのも悪くないね


色々考えてくれてありがと


またこれからも、こんな日が続くといいね


今日楽しかったこと、夢に見れるといいね


ん、寝ちゃったかな


……良かった、気持ちよさそうに寝てる


ふふふっ、かわいい


ちゅっ♡


……おやすみなさい

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