モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい

優摘

第1章 悪役令嬢は目立ちたくない

第1話 プロローグ

 「もう!、もっとスピ―ドは出ませんの!?」


 「アリアナ、今日の天気でこれ以上馬車を急がせるのは危ないよ」


 お兄様のクラークは、わたくしをやんわりとをたしなめた。でも、わたくしはそんなの聞いていられない。


 「ダメですわ、お兄様!だってディーン様はもう学園に着かれてるんですって。わたくしも早く行かないと」


 「別に、ディーンは逃げやしないと思うよ。」


 「そんなことを言ってるのでありませんわ!ディーン様は女性におもてになるのです。おかしな人に言い寄られてるかもしれませんわ!」


 そう、わたくしは心配なのだ。とにかくディーン様はもてる!公爵令息で美形で頭も良い!もてない方がおかしいくらい。


 「大丈夫だよ、アリアナ。ディーンはお前の婚約者じゃないか。それに、お前はとても可愛らしいからね。ディーンが他の女性に目移りする事は無いよ」


 お兄様は「そんなことがあったら僕が許さないよ」と言いながら、私を愛おしそうに見た。でも私は心配で仕方なかった。


 「まだ、学園は遠いんですの?」


 馬車の外は大雨の様だ。強い風の音も鳴っている。


 「夕方までに着かないと、今日中にディーン様には会えませんわ!」


 そう言って、御者にもっとスピードを出すように言おうと思い、前方の小窓を開けた時だった。

 ドーン!と言う鼓膜を破るような音と、真っ白い閃光が辺りを包んだ。


 「キャー!」


 わたくしはそのまま意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る