寂しからずや街灯(あかり)もかすむ名月

寂しからずや 街灯あかりもかすむ名月










 仲秋の名月を見るために夜中にベランダに出ました。

 深夜を過ぎていて、人の音も車の音も随分静かで、でもマンションなどでは、深夜になっても階段などの常夜灯が煌々と灯っていました。

 遮るものがあまりなく、低い山の稜線の上に、藍色の夜空が広がっているのがベランダからは見えていました。その夜空に、ぽかんと、大きな満月が浮かんでいる。

 空気が澄んでいて、月の光の届き方がすごく鋭いのです。

 あのどこか郷愁を誘うようなマンションの常夜灯も、点滅する信号機も、二十四時間点いているコンビニの灯りもかすむほど、明るいのです。

 夜空の大きな月は、明るすぎてどこか異質なものにも見えます。

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