第86話 偽善

 スピカが厳しい口調で言った。


「ふん!だから何よ。あんな悪魔の手下」


 ライラが続ける。


「悪魔の手下?

 ザイドは、バレバレなのに、匿名で村に義援金で支援したりしてさ。

 たしかに、どうせ悪いことをして稼いだ、汚いお金だろうよ。

 偽善と言われてしまえば、きっとそうだと答えるしかない。

 でも、おかげで今年の祭りは、過去最大規模さ。近くの村が悪魔に焼かれて、遭難した人々をアーシヤ村長が助けたのさ。お祭りで元気づけようってわけさ」


 確かに、マツモト村よりもずっと人が多いように感じる。

露店では肉が焼かれ、レモネードやフルーツジュース、リンゴ飴まで売られている。

 スピカが大はしゃぎで、あちこち見て楽しんでいる。


「わー!楽しそう!ねぇ、コフィ、ちょっと歩き回ってみようよ!」


 ライラも楽しそうだ。


「ザイドの友達なんだろ。友達の友達は、友達さ。

 村を案内してあげる。一番楽しいときに来てくれて嬉しいよ」

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