第31話 モニタールームへ
フロアを抜けた先の通路の景色も変わらず鉄板で出来ている。
ただ、照明は完全に落ちており、非常灯の様な光がたまに足元を照らす程度だ。
「いやに静かだな……」
そう呟く俺の声も反響してしまう程の静寂である。
アラート音が消えてから、入ってきた時より更に静かになっている気がする。
これは憶測になるが、侵入者がフロアで排除されたと認識され、平常時に戻ったとかなのだろうか。
時折換気扇が回るような音がする。
その音が聞こえてくるたびに魔物かと思ったが、そんな事は一切無かった。
そして油断せずに進み続けると、人が一人通れる程の小さめの扉に辿り着いた。
その扉はスライド式のドアになっている。
慎重に手をかけ、ゆっくりと開けた。
「ここは一体……」
扉を開けた先には正方形の部屋があった。
中央には自販機ほどのサイズで、まるでコンピュータのサーバーの様な黒い箱が設置されており、
四方の壁一面、モニターで埋め尽くされていた。
ほとんどが暗転している状態だったが、
3つだけ映像が流れていた。
一つはこの施設の入り口周辺を映しており、
もう一つは蜘蛛型兵器が居た部屋
そして最後の画面には巨大な穴と丸太で作られた壁と門が映し出されていた。
「この画面は一体どこを映している……?」
それにしても……
改めて思うがこの施設、どう見ても自然に発生した物ではなく人工物……。
一体誰が何の為にこの施設を?
この世界は……一体何なんだ……。
疑問は膨れ上がるばかりだが、一つはっきりしている事はこの施設が止まれば魔物……機械の生産は止まる。
この部屋を調べよう。緊急停止ボタンなどあるかもしれない。
そして、しばらくモニターの裏や中央の機械を入念に調べるも、ボタンと呼べるものは一切見つからない。
モニターをタップしても何も反応は無かった。
俺は中央の黒い機械をいっそ破壊して見るか?
と考えたが、爆発や暴走する可能性も捨てきれない為、踏みとどまった。
すると、他よりサイズが大きい中央のモニターが突然光始めた。
そこには線で描かれた地図と赤いマーク、そして生産完了。下層へ輸送開始という文字が表示された。
その瞬間、施設が揺れ始めドンドンドンと何かが大量に動く音が鳴り響き始めた。
そして揺れと音が徐々に遠ざかってきた時、真っ黒だったモニターが一斉に映像を表示させた。
「何の映像だよこれは……」
その映像は赤外線カメラの様に暗いものだったが、高速で移動しているのはすぐに分かった。
何か施設のヒントが無いかと思い、入念に見ていると赤外線カメラが通常のカメラに切り替わり鮮明な景色が映し出された。
その映像には森と丸太で出来た城壁のような物が映されている。
そして、城壁に向かって移動する映像に思わぬ人物が映し出された。
「ハナ!?」
複数のモニターで色々な角度でハナが映し出されている。
その他のモニターには鎧を着込んだ大人の姿も映し出されていた。
カメラは人々方へ向かい、大きな鎌を振り下ろした。
その瞬間、この映像はデットマンティスマシンの視点だと瞬時に理解した。
「くそ、下層に魔物が出現しているのか! 一度俺も戻るか……!?」
俺は咄嗟にリターンを唱えようとした。
しかし、ハナの姿をみてそれはやめた。
ハナは二本の剣を自在に操り、デッドマンティスマシンを次々と破壊している。
その度にモニターが一つ二つと暗転していった。
他の大人たちも非常に苦戦しているがデットマンティスマシンの数を徐々に減らしている。
「凄い剣術だ……」
ハナ達は強い。上は安心して任せられる。
俺は俺のやるべき事……この施設を止めなければならない。
表示された地図を眺めながらそう改めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます