第22話 巨大な施設
「……」
俺達はあまりの景色の違いに思わず圧倒していた。
この場所は普段の場所に比べて薄暗く、壁と床一面は鉄板で出来ていた。
前方にはドーム状の巨大な施設が建設されている。
更に、ドームの中心部には巨大な円柱が建っており、上に果てしなく伸びている。
「何だここは……」
空を見上げると、いつもの空とは大きく異なり、果てしなく真っ暗な虚空が続いていた。
「これ、鉄って奴ですよね」
フーチェは床を叩きながら言った。
その問いに俺は恐らくそうだろうと答えた。
「これだけ周囲に鉄があったら、マグはまともに動けなかったかもしれませんね……」
「そうだな。エンハンスを解けば行けるんだろうけど、危なすぎる」
そんな会話をしながら、俺は結果的にマグを連れてこなくてよかったと安堵していた。
「とにかくあの施設へ行こう」
俺がそう言うとフーチェは頷いた。
そしてそのまま走って近づいて行った。
・・・
施設の周囲を少し調べると、幅高さ5m程の巨大な出入り口を発見した。
その出入口には機械的な部品や太いパイプのような配線が張り巡らされている。
早速入ろうとするも……
「あれ、見えない壁があるぞ」
と何かに出入り口を阻まれている事に気がついた。
俺が何だろうと考えていると、フーチェが
「叩いて壊してみましょう!」
と言いそのまま見えない壁を叩いた。
しかし、見えない壁は音を発することなく、静かに波打つだけだった。
「何でしょうこれ……感触が無いと言うか、直感的に壊れる気がしないです」
フーチェの言葉を聞き、今度は俺がブラストを撃ってみた。
すると、ブラストは見えない壁に溶けて行くように静かに消えていった。
「だめだ……どうすれば」
二人で考えていると、突然後方から魔力の気配がした。
「うぉ!?」
俺は咄嗟に回避し、気配がした方法へと振り向いた。
すると、一人のセミロングヘアで赤い髪の少女が俺達に向かって歩いて来ていた。
「誰だ?」
俺がそう問うと、
「貴方達こそ誰なの? 門下生では無いみたいね」
と聞き返してきた。
するとフーチェが間に入り、
「待ってください! 貴方、神徒ですか? 私もです! ユニークリングだったのでここへ落とされました」
と言った。
すると少女は、
「そう……私と一緒なのね」
と戦闘態勢を解いた。
まさか、ここで別の神徒に会うとは思っていなかったな。
近づいてきた少女に対し、まずはこちらから名乗り出た。
そして、それを聞いた少女も、
「私はリリアナ。フーチェと同じでユニークリングだったからここへ落とされたわ」
と答えた。
年齢はどうやら俺と同い年のようだ。
「質問なんだが……道場とは?」
と俺は質問した。
それに対してリリアナは説明するより、一緒に来てみるか?
と聞いてきたので、俺とフーチェは行きたいと答えた。
すると、リリアナは
「来るのは良いが……フーチェ、貴方の格好はちょっとまずいわね」
と炎を纏った全裸のフーチェを指差して言った。
俺はもうその姿に見慣れてしまっていたが……改めて言われるとおかしな状況だ……。
「その炎のせいでしょう? 私が良いものを持っているわ」
そう言ってリリアナはリュックから黒いローブを取り出した。
それをフーチェに手渡し、着てみるように言った。
「炎、出してみて」
リリアナにそう言われ、フーチェはエンハンスを纏った。
すると、ローブは青色に光始め、燃える事は無かった。
「わぁ、燃えませんよ!」
喜ぶフーチェに対して、リリアナは
「このローブの生地にはグリムホーフって魔物の皮を使っているの。この皮はかなりの耐火性を持つのよ?」
と説明してくれた。
それを聞いた俺とフーチェは顔を見合わせ、
「グリムホーフの皮……捨ててきちゃったね」
と言い合った。
それを聞いたリリアナは
「な! なんて勿体ない事をしたのよ!」
と俺達に言い放った。
そして、とにかくその恰好なら大丈夫だろうとリリアナが言い、
俺達は道場へと向かう事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます