七夕チャレンジ
九戸政景
第1話 瞳の中の星
あの日見た星を僕は一生忘れないだろう。
そう言える程に綺麗な星を見たのはまだ小さい頃だ。その日僕は、家も隣同士という事で家族ぐるみで仲良くしている幼馴染み一家と一緒に天体観測をしていた。
向こうのお父さんが天文学者であり、その日は流星群が見られる日だからという事からウチも誘われ、それを了承した事で一緒に天体観測へと向かったのだ。
その頃の僕はそんなに星には興味が無かったけれど、いざ見始めてみると頭上を埋め尽くすかのように多い星達に魅了されて、思わずほうと声を出してしまう程だった。
そして見始めてから数分後、一つの流れ星が見えた事を皮切りに一つまた一つと漆黒の夜空に青白い星が流れていった。自分の事だからしっかりとはわからないけれど、恐らくその光景を見て僕は目を輝かせていたのかもしれない。
そうしてふと幼馴染みの方を見ると、幼馴染みはすごく嬉しそうな顔で流星群を見ており、その顔を見られただけでも来て良かったと思っていたが、その時に僕はハッとした。幼馴染みの目の中に星が見えたのだ。
それは見ている流星群が反射した物だったのだろうが、夜空と同じ黒い瞳の中を流れ星が幾つも流れていく光景は僕を魅了して止まず、その天体ショーを見せている幼馴染みの顔からも目を離せずにいた。
そうしている内に流星群は終わり、僕達は帰る準備を始めた。その間にも幼馴染みは流星群の感想を楽しそうに話していたけれど、僕の頭の中にはずっとさっき見た瞳の中の星達だけが残っていた。
そんな経験もあってか、今僕は天文学者になっていて、その幼馴染みとは結婚をして子供までいる。
そして星や月が綺麗な日には、家族揃って天体観測をしているのだが、どんな星や月もあの日瞳の中に見た輝く星にはまったく勝てやしない。だから、僕は死ぬまでこう言い続けることになるのだろう。
あの日見た星を僕は一生忘れないだろう、と。
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