物理系魔法少女、天にまで届く叫びをする
「先生が依頼するなんて珍しいわね。ね、ミズノ」
「うん。ミズノはアオイちゃんと一緒なら、地獄でも行ける!」
「そ、そう」
自分は先生から依頼を受け、古代の庭と言うランク帯の低いダンジョンで取れる薬草を取りに来た。
本当ならミドリとも一緒に来たかったのだけれど、彼女は補習らしく、一緒には来れてない。
ミズノはずっと笑顔だ。
「やぁやぁ蒼炎の魔法少女さん、それと⋯⋯」
「あら。ファンかしら」
「⋯⋯人の話は最後まで聞きなさい? 碧水の魔法少女さん」
「ミズノの事を知っている?」
同時に距離を取る。
矢をイメージして、炎の矢を顕現させて放つ。躊躇う必要は皆無だ。
ミズノも短剣を抜いて臨戦態勢に入る。
「⋯⋯いきなり攻撃ですか。元気な事ですね」
「名乗りなさい」
「⋯⋯わたしは音の使徒です。まぁ、君らの敵⋯⋯になるのかな?」
「自分達の前に単身で来るとは⋯⋯あまり舐めないでいただきたいモノね。ミズノ、全力で行くわよ!」
「うん」
「どうぞ、全力で来てください。こちらは決して、全力で行きません」
◆
「⋯⋯もう帰ろうかな」
恐竜の上に乗って太陽を見上げていると、何もかものやる気を失う。
え、太陽?
「太陽がなんで普通にあるんだ? ⋯⋯てか、このダンジョンって日本のどの辺にあるんだっけか?」
あ、いや。
太陽っぽいのは他のダンジョンでも普通にあるな。気にして無かっただけで。
まぁ考えても仕方ないし、そろそろ移動するか。
やる気が出るかは、一歩を踏み出してからだ。
ステッキツルハシバージョンの
「大型メジャー恐竜は中々に見当たらないな」
移動をしていると、爪が異様に長い恐竜を発見した。
確か⋯⋯テリジノサウルスだっけ?
「⋯⋯ここまで恐竜知識がある自分にびっくりだわ」
中立かな?
あ、目が合った。動かないからぺこりと挨拶する。
目が赤色に光った。
『急にお辞儀?』
『日本人だなぁ』
『いやでも、相手は殺戮モードやん?』
中々の速度で迫って来て、発達した爪で攻撃して来る。
防ぐけど、頬をかすり斬る。
「厄介だな」
しかも反対側の方の爪は残ってるし、バックステップで避ける。
爪の破壊をしてみるか?
「警戒している⋯⋯?」
攻めて来たけど深追いはしてこないな。
だったら、こっちから行くか。
攻撃範囲を広げる為に、ツルハシを横薙ぎで振るう。
「お前も後ろに下がるんかい!」
あ、しかも木に刺さった!
⋯⋯刺さった?!
「くっそ抜けねぇぞ! 不便だなツルハシ!」
『お、拳に変えるか?』
『木を破壊してツルハシを振り回すに一票』
『蹴りに一票』
爪の攻撃を避ける。木が切断される。
破壊力高ぇ。ステッキの剣よりも斬撃の力が強いや。
「とっとと」
攻撃を避けるけど、カスってしまう。
爪を武器にする奴と戦った事がねぇから、上手く避けれない。
大きくステップを踏んで距離を取り、地面に手を着ける。
力を強く加えて、蹴る。
「必殺マジカルシリーズ、
頭から突っ込んで、相手の腹に大ダメージを与える。
爪でガードしようとしていたのか、数本折れた爪が地面に転がっていた。
柄の部分を蹴り上げてツルハシを回収し、縦に振るう。
それに合わせる爪攻撃。
「うんなもん、意味ねぇよ!」
爪を破壊して、地面に突き刺さる。
少し後ろに足を移動して、ツルハシを蹴り飛ばしてテリジノサウルスにぶつける。
怯んだ瞬間に懐に飛び込んで、腹を捕まえる。
「どすこい!」
持ち上げて、大きめの木に向かって全力で投げ飛ばす。
ツルハシを投げ付けて、足に突き刺す。
「ジェシャアアアア!」
「そら、楽になりな!」
高く跳んで、蹴りを突き浴びせる。
大地を抉る俺のキックはテリジノサウルスを見事に倒して、魔石と長い爪を獲得した。
「⋯⋯あ、もう傷が治ってる。自己再生って便利だけど少し怖いな」
ステッキもきちんと回収する。
「⋯⋯ここじゃいまいち良さが分からなかったな。やっぱりゴーレム相手にしてみないとな」
でも狭い空間とかで使うと壁とかに突き刺さって面倒そうだ。
今回地面に突き刺した時は少しだけ力を緩めたしな。
だから不意打ちに利用できた訳だし。
「⋯⋯結局拳とかの方が攻撃しやすくね? 手刀での攻撃も練習しておきたいな。後は投擲で頭を攻撃できるようになりたいな」
さーて、疲れたし帰るか。
実際もう定時⋯⋯くらいなんだし。
「まって! 今日の俺の成果、ラプトル数匹、バリオニクスとテリジノサウルス一体づつ! 少なっ! 想像以上にのんびりしてる!」
これはあれだ。紗奈ちゃんに「ちゃんとやる気あるんですか?」って凍らされるパターンだ。
誠心誠意の謝罪と言い訳を考えないと。
あ、言い訳した時点で詰みじゃね?
謝罪を考えなくては。
「と、とりあえず終わろう。検証結果は⋯⋯ゴーレムで試します!」
さてと、撮影を終わらせようかな。
⋯⋯こ、コメント?
「ふっ。経験者の俺はすぐに現状把握ができるのだよ」
『こんにちわ〜』
『お気づきですか、挨拶5分くらいしたらアカツキちゃん』
『恐竜の上は楽しかったですか?』
『のほほん顔最高でした!』
『黄昏てましたねぇ』
『安心してください。全部見えました!』
『ツルハシは強そうでしたよ?』
『不便だったかな?』
『うっかり配信を二回も素でやる人がいるとは⋯⋯世の中広いですね』
「うわああああああああああ!」
元社会人、同じミスしてどうすんねん!
そういや、前回はコラボライブだから、それと同じ流れでやってた!
うわあああああ!
『顔も髪も服も紅に染まる』
ライブを終えた。
帰ろう。帰って反省しよう。
切り抜き動画が出ませんように。
「はは。うっかりが二回目っておかしいだろ。それはもう狙ってるんよ。⋯⋯全く狙ってない二回目ってなんだよ」
帰路に着き、自分の行いを反省していると、目の前に倒れている俺と同じような格好をした人が居た。
アオイさんとミズノだ。すぐに分かる。
立っている、ロングヘアーの男が居る。
「おや? 新たな魔法少女かな? どうも初めまして、音の使徒⋯⋯」
リュックを置いて、俺は既に接近していた。
身体が勝手に、動いていた。
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