物理系魔法少女、連携は簡潔にスピーディーに

 「俺はまず術士をやる。ホブは頼む。俺が終わったら援護する。魔法は使わずにいて欲しい」


 「しかたない」


 術士を倒すのは簡単だ。近づいて、殴る。


 それだけだ。


 それを邪魔するのが⋯⋯ホブゴブリンお前だ。


 「だけど、もうお前の相手をする気は無い」


 振り下ろされる大剣を蹴って弾く。その瞬間に背後に移動するミズノさん。


 斬撃の雨がホブゴブリンを襲う。これでヘイトは変わった。


 次は俺だ。


 「ここは⋯⋯棒だな」


 術士は二体、魔法が俺とミズノさんに襲いかかる。


 どっちも火球。


 「シッ!」


 ミズノさんの方に飛んでいる魔法に向かって棒を投擲し、破壊する。


 俺に来た魔法はキャッチして、そのまま走って運ぶ。


 「戻れ」


 棒を掴み、地面に強くぶつける。


 その反動で俺は高くジャンプ。


 「それっ。まずはお返しだ!」


 一体の術士に火球を回転を乗せてお返しておく。


 加速した火球はお前らが普通に使う時よりも脅威だ。


 「氷の矢か?」


 残った奴の悪あがきの魔法。そんなのは砕いて終わりだ。


 着地と同時につま先に力を入れ、駆ける。


 素手で、貫く⋯⋯のは避ける。


 なのでステッキを槍にして突き刺す。


 「げっ。急所でも外れたのか?」


 魔法を使おうとしたので、両手でゴブリンの頭を掴んで、上に引っ張った。


 うん。惨い殺し方をしてしまった。


 さすがに同情してしまう。犯人俺だけど。


 「さて⋯⋯今のミズノさんならちょっとした言葉は聞いてくれそうだよなぁ」


 そのまま槍の先端をホブゴブリンに向ける。狙いを定めて、投げる。


 「ミズノさん! 避けて!」


 「⋯⋯ッ!」


 ホブゴブリンを蹴って回避するミズノさん。槍は見事にホブゴブリンに命中した。


 「ウオオオオオ!」


 ひぃ。うるさい断末魔。


 隣に並んで来たミズノさんは俺のスネを蹴った。痛いでござる。


 「お前、ミズノ狙った!」


 「ごめんなさいね? アイツ、狙いとか軌道とかかなり読めるからさ。ギリギリまで気づかせないために遮蔽物を利用した」


 「⋯⋯お、ま、え。ミズノを道具だと言うのか?」


 「言葉のあやだよ。ミズノさんはミズノさんだろ? 水色の髪が良く似合う女の子、回避できるって信じてたからできたんだよ。それでもあまりダメージは期待できない。行くよ」


 「チィ。今から斬撃範囲と火力を上げる魔法を使って攻撃する。チャンスを作れ。⋯⋯狙いは両目だ」


 「りょーかい」


 俺はホブゴブリンに拳を突き出した。


 「グオ!」


 手のひらで防がれる。掴まれるのは嫌なので、蹴って逃げる。


 槍のステッキは回収しておく。バットに変更。


 「アカツキスイング!」


 大剣でスイングを塞ぐか⋯⋯やっぱりコレは高く売れそうだ。


 そら、キックだ。


 「下半身に重心を変えたか。少しは傾いてくれよ」


 キックはイマイチの結果で終わり、反撃の剣が舞う。


 バットで防ぐが、飛ばされる。


 「アカツキ!」


 「大丈夫! 俺ちゃん打たれ強いんでね」


 防御評価はBだけど、筋力で補ってます!


 それにバットで直接の攻撃は防いでいる。


 「水の魔、付与、水刃!」


 ショートソードが水の刃を纏う。そこから繰り出される斬撃はホブゴブリンの身体を深く抉る。


 両目を切り裂くのに成功した⋯⋯が、空中に投げ出された身体に向かって空いていた左手が向かう。


 「させねぇよ!」


 さすがに俺のようなタイプじゃないと、掴まれたら終わりだ。


 スピードと魔法を兼ね備えたミズノさんには良くない。


 それに、女の子を守るのが男の役目だしな。


 「何よりもパワーは俺の方が上だ!」


 「⋯⋯ッ! 助かった」


 手を蹴って弾いた。


 「グオオオオオオ!」


 大剣の攻撃か。避けるのは間に合わない。防ぎ切る!


 「任せろ。受け流す」


 「了解」


 俺はステッキを捨てて、体勢を正す。


 「ふんっ!」


 ミズノさんが受け流し、大剣が俺の横を過ぎ去る。


 「必殺マジカルシリーズ」


 全力で拳を固める。


 「本気殴りマジカルパンチ


 強い衝撃音と共に、ホブゴブリンが宙に舞って地面に激突する。


 魔石に変わる雰囲気は無い⋯⋯耐えられたのか?


 「満身創痍、直に死ぬ」


 「そっか⋯⋯大剣貰って良い?」


 「持ち帰れ⋯⋯るか。⋯⋯ドロップしたらな?」


 「大丈夫。だってほら、手から離してるんだよ? 確ドロ演出だよ!」


 ホブゴブリンの魔石ゲットだぜ!


 「武器を捨てたから、ドロップアイテムとして手に入る訳じゃない。良い学びになったな」


 「⋯⋯そうだね」


 魔石をリュックに入れる。最後に討伐したから、俺にくれた。


 「ナイスバトル、ミズノさん」


 「ミズノで良いよ。少しは⋯⋯まぁ、アオイちゃんの一パーセントくらいは信用してやる」


 「そりゃあ良かった」


 良かったのかな? むしろ、自分の正体を隠す全力度が上がった気がする。


 信用してくれている相手を騙しているんだよなぁ俺。


 継続的に精神攻撃を受けている感じだ。


 「⋯⋯にしてもこれ程の群れは中々無い。人が来ないってのも無いだろうし⋯⋯何かあるのか?」


 「まぁ、どうでも良くない?」


 「⋯⋯世界の平和を守るのが魔法少女の役目。だけどアオイちゃんが居ないから何かを考える気力は出ない。無視だな」


 「そうそう」


 「レベルは上がった?」


 ステータスカードを見られないように確認する。


 お、上がっていた。


 上がるんだな。正直意外だ。


 「ふっ。完璧だ」


 「おお。この短時間で上がったのか」


 「あぁ。上がったし増えたな」


 「⋯⋯は?」


 「『自己再生スキル.3』に上がり『衝撃耐性.1』が増えた」


 「ヘェー(棒)」

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