物理系魔法少女、意図しないライブを終える
「だはぁ。疲れた」
とりあえず今日はこの辺で良いだろう。
あ、結局最初の挨拶とか一人称設定とか決めれてなかったな。
決めてから再び挑戦すれば問題ないか。
「帰ろ帰ろ」
スマホを手に取り、録画を終えるために画面を見る。
「⋯⋯視聴者数、チャット欄、なんかおかしくないか?」
『お、気づいたようだ』
『解説、録画と勘違いした生配信』
『よ、脳筋魔法少女』
『録画だと思っていたお前の姿はお笑いだったぜ。応援してますこれからも頑張ってください』
などなど、そのようなコメントの嵐だった。
う、嘘だろ?
配信サイトに直接録画して、データを残す仕組みだと思ってた。いやまぁ、間違ってはなさそうだけど違う。
「ん〜きちんと考えてやらんとこうなるのか⋯⋯」
ま、やってしまった事はしょうがない。
なんかキャラ設定で『俺系女子』って言うのもあるので、俺は俺のままで良いだろう。
いきなりチャンネル登録者が六千人ってなかなかじゃないか?
『レベル1ですか?』
「そうだよ。あ、終わりますね」
帰りたい。
なんかなってた生配信を終えて帰宅する為にゲートに向かった。
「弁当の包みを利用したら、昨日よりも多くの魔石を運べるな」
ゲートを通り、紗奈ちゃんのところに向かった。
「お疲れ様」
「うん。⋯⋯終わるの待った方が良い?」
「待ってくれないの?」
「待ちますよ」
終わりは5時だったか?
あと一時間はあるな。
「それでは、査定致します。ステータスカードを提出してください」
仕事モードに入ったので、俺もきちんと義務を果たす。
早めに切り上げて、並ばないで終わろうとするにはもう少し早く来ないとダメらしい。
そこそこ並んだ。
今日はあのスケルトンの魔石のおかげで、二万円を稼ぐ事ができた。
ありがたい限りだ。
5時になった。
色々と調べていたら、あっと言う間に時間は過ぎてしまった。
「それじゃ、行きますか」
「そうだね」
俺のボロアパートに帰還する。
ん〜紗奈ちゃんが来るならちゃんと掃除とかした方が良いな。
時間は沢山あるし。
「そう言えば今日の魔石、一つだけネクロマンサーの魔石が入ってましたが、なにかあったんですか?」
サクサクと何かを作りながら、会話して来る。仕事として興味あるのかな?
仕事の話だ。
「あーなんか地下室? みたいのがあってね」
「なるほど⋯⋯ん?」
紗奈ちゃんの手が止まる。
「どったの?」
「あ、いや。それ多分クエストのネクロマンサーですね」
クエスト?
あれか?
受注して、内容をこなすと報酬を受け取れるシステム的なアレ?
そんなゲーム的なクエストが現実世界にも存在するの?
「クエストは⋯⋯まぁ星夜さんの考えている通りのシステムだと思ってください。ダンジョンには時々、イレギュラーって言う本来起こらない状態の事を指す言葉があるんですけど」
再び料理の手を動かし始める。
「その一つに今回、星夜さんが倒したネクロマンサーが含まれてるんですよ。報告を受けてから、一応難易度を考えてクエスト言う形で告知してたんですよね。イレギュラーの対処は本来とは違う報酬が用意されるべきって言う考えで」
そうなんだ。
あいつ、一年とか言ってたし、相当そのクエストって放置されてたんだな。
それとも地下室の場所が見つかってなかったのか?
「危険じゃないの? 早めに対処しなくて」
「レベルの低いダンジョンですからね。長く放置しても問題ないと上が判断したと思うよ。被害も無かったしね。あったら、上級者の探索者が討伐したと思う。あと、クエストはイレギュラー限定って訳じゃない」
まぁ、完全な引きこもりっぽいし被害は無かったんだろうな。
「後日上級探索者に依頼して、調査した後にクエスト報酬が入る手続きをしようね」
「場所とかわかるなら、なんで誰も行かなかったんだろ?」
「レベルの低いダンジョンのネクロマンサーのドロップアイテムで旨みがあるのは魔石、その魔石もゴブリン20体分だから、労力や効率的にもゴブリンを大量に狩った方が儲かるし、場所も遠いのが原因かな?」
流石はギルド職員、とても詳しく解説してくれた。
そっか⋯⋯ま、俺の場合は魔法少女の性能チェックとか色々できてありがたかったので何も言うまい。
実際、あの数を相手にすると考えたら確かにゴブリンを滅殺した方が楽。
「できた。チャーハンとミネストローネ」
「お、美味そう。いただきます」
結論、どれも最高に美味しい。
高級レストランで食べるよりも、全然美味いと思う。
食べた事ないけど。
「明日もダンジョンに行くつもりある?」
「一応行く予定よ。まだダンジョンとかギルドシステムに慣れてる訳じゃないし」
「そっか。私も仕事あるので、一緒に行こうね」
「うん。頑張って起きます」
「うん。くるしゅうない」
その言葉チョイス合ってるの?
可愛いので問題ないだろう。
可愛いイコール正義だ。
「⋯⋯そう言えば星夜さん」
「ん?」
「武器登録とか一切してませんけど、どうやってゴブリンやらネクロマンサーやら倒したんですか?」
「⋯⋯」
思い出したが、なぜか【魔法少女】のスキルに関して一切触れられてないんだよな。
もしかしてさ、見えないのでは無いだろうか、そのスキル。
今回はそう仮定した上で考えよう。
バカ正直に打ち明けるのは良いと思う。
多分、多分だが彼女はその程度では拒絶する人ではない。
だがしかし、俺の男しての小さなプライドがこれだけは秘密にしたいと言う気持ちもある。
嘘をつくのは辛いが、関係を悪化させないためには仕方ない。
嘘も方便だ。合ってるかは知らんけど。
「⋯⋯き、企業秘密」
「筋力のステータス評価がSだったので、ぶん殴ったり蹴ったりで倒している⋯⋯のかな?」
はい、大正解!
ただ俺の見た目が可愛い女の子になってるのは想定できまい。
俺はしたくない。
◆
アカツキ考察
『新しい配信者、魔法少女アカツキ、普通に強いのヤバない?』
『スキルに恵まれたんだろ』
『或いはレベル高いのに低いところで無双しているのか⋯⋯』
『うっかりライブ(?)を見ている限りそうでは無さそうだけどね』
『必殺マジカルシリーズ、ただ言っているだけ』
『魔法少女なのに魔法を使わないのはウケました』
『使わないんじゃない。使えないんだ。真実は知らんし分からん。誰もステータスカードは見せん』
『使えない感じは普通にあったけどね』
『誰かー魔法を鷲掴み試してー』
『あぁ、それ俺試したけど普通に大火傷して骨見えて、ヒーラーにブチ切れられたわ。くっそ痛かった。普段行ってるダンジョンで試すんじゃなかった』
『CGには見えんかったよね』
『実際クエストの魔物だしな』
『試した人の数は大怪我した人の数のイコールである』
『アカツキが異常なんだよね』
『ちょっとした起点利くのに、基本的に殴る事しかしない』
『殴って倒せるんだがら問題ない』
『相手の魔法を利用して、より火力上げて返すっておかしいよね』
『電気は普通に効いてた』
『耐性スキル?』
『中身男説は無い? 変化系のスキル』
『あんな長期的に変身できるスキルは無い。ちなみに女になるスキルは実在するけど、本当に見た目や声が変わるだけね』
『ほんとそのスキルは良くない。悪用されてマッチングアプリで騙された』
『アカツキは正義の殴り少女だから』
『魔法少女(定期)』
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