10 突然の訪問
数日後。
「あの、レインさんにお客様のようです」
俺が『青の水晶』に行くと、ニーナからそう言われた。
「お客様?」
「冒険者ギルド『王獣の牙』の副ギルドマスターをされている方々だと仰ってますが……」
「……あいつらが?」
俺は表情を引き締めた。
かつて所属し、そして追放されたギルド『王獣の牙』。
三人の副ギルドマスターは、いずれも俺のことを役立たずだと断じていた。
今さら話すことなんてないはずだが──。
「分かった。会うよ」
「応接間にお通ししています」
言って、ニーナが俺を心配そうに見た。
「大丈夫ですか、レインさん。『王獣の牙』って、確かレインさんの──」
「大丈夫だよ。ありがとう、心配してくれて」
ニーナに微笑み、俺は応接間に進んだ。
「久しぶりね、レイン。元気そうじゃない」
「活躍してるようで何よりだ」
「A級になったそうではないか」
三人の副ギルドマスターが俺を見ていた。
「……ご無沙汰しています」
俺は一礼する。
一体、なんの用だ?
警戒心を抱えつつ、彼らの前に座った。
「実は、あなたに伝えたいことがあってね」
切り出したのは、三人のうちの一人──中年の女剣士グレンダさんだ。
「お前が心配だから来たんだ」
「今は別々の所属になったとはいえ、仲間だからの」
と、野性的な戦士のコーネリアスさんと老僧侶のゲイルさん。
……何が仲間だ。
あんたたちは俺に罵詈雑言を浴びせて、一方的にクビにしたじゃないか。
そう思ったが、彼らの伝えたいことというのが気になり、とりあえず内心の声にとどめておく。
「伝えたいこと、とは?」
「あんた、暗殺者に狙われてるよ」
グレンダさんが言った。
「ギルドマスターのバリオスが暗殺者ギルドと連絡を取っている」
「すでに暗殺者には依頼済みのようだの」
「なぜ、俺を……?」
「今、あたしらのギルドはかなりピンチなんだ。次々と所属冒険者が辞めていてね」
「バリオスさんは、それをお前のせいだと考えてるらしい」
「で、恨みがつのって、お前さんを殺してやる──と短絡的に考えたらしいの」
三人が口々に言った。
「バリオスさんが……」
あり得なくはない。
俺はギルドを追放されたとき、今まで行った武器防具の強化を全部解いていった。
もともと無報酬かつ善意でやっていたことだし、彼らが俺の気持ちを踏みにじるなら、俺も相応の対応を取ろうと思ったのだ。
もしかしたら、それが原因でギルドの冒険者たちが弱体化した……?
「ね、ねえ、よかったら『王獣の牙』に戻ってくれない?」
グレンダさんが切り出した。
「えっ?」
こいつら──今さら何言ってるんだ。
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