第13話 協力してくれますか?
私は怜那さんのことは村の人達に任せることにしました。
今私がやってあげることは、良い医者さんを連れて来る事でも、側に居て元気付けてあげる事でもありません。
それもとても大切ですが、私には聖水を作り根本的な解決を促すことしかできないのです。
「悔しいですね。私には、それしかできないなんて……」
私はそう言いながら、待合所を出ました。
情報は少ないですが、やれることをやるしかありません。
とりあえず屋敷に戻ることにしますが、誰かが声を掛けてくれました。
「アクアス様」
振り返ってみると、そこに居たのはシュナさんでした。
如何やら気配を消して来たようですが、顔色が
何かあったのでしょうか? 逆に尋ねてみます。
「如何しましたかシュナさん。それにいつからそこに?」
「事情は把握致しました。昨日、聖水を完成させたばかりだと言うのに、もう次の聖水に取り掛かるのですね」
如何やらずっと聞いていたようです。
昨日は一緒にと誘ったものの、結局断られてしまいました。しかしその後、後を付けてくれていたみたいです。
全く、頼りになるメイドさんです。
「シュナさん、私は……」
「アクアス様は十分やっておられます。ですので自信を持ってください」
「自信なら最初からありますよ。ですが、一体何から手を付けたら良いものでしょうか」
問題はそこにありました。
期限は二十日間。あまりにも短いです。
その間に聖水を完成させなければ、通例通りのことになります。そうならば、約束を果たせないどころか、人の命も救えないことになります。
それだけは絶対に嫌です。
「アクアス様はもう決めているのではありませんか?」
シュナさんは私の心を見透かします。
確かにそうです。私にできることは、これくらいしかありません。
「そうですよね。私にできることは一つです」
と言うわけでまずは屋敷に戻ります。
しかし今回も時間がありません。シュナさんにも協力を仰ぎます。
「シュナさん、協力してくれますか?」
私はシュナさんに尋ねます。
一人では無理でも二人なら。きっとできることも増えるはずです。
シュナさんにとっては専門分野ではありませんが、心強い味方になってくれます。
それだけ私はシュナさんのことを信頼していました。
するとシュナさんは膝を付き、頭を下げます。待合所の前ですが、全く気にしません。
「シュナさん!?」
私は動揺します。
こんな所でこんな真似、これでは私がさせているように見えてしまいます。
「この身この命、全て貴女に捧げたものにございます。何なりと御命令を」
「シュナさん……ありがとうございます。ですさま、顔を上げてください」
「はい」
「私はそう言った畏まった態度は好きではありません。ですが、手伝っていただけるだけで感謝します」
私はシュナさんを少しだけ厳しく当たりますが、気持ちは伝わります。
するとシュナさんは笑みを零します。表情が柔らかいです。
如何やら好意的な様子でした。
私はシュナさんに協力を頼んで良かったと思います。
「それで、私は何をすればよろしいですか?」
「そうですね。では、この辺りに生息している植物を一部纏めた植物標本を出しておいてもらえますか?」
「承知致しました」
シュナさんは丁寧にお辞儀をします。
それからスッと顔を上げました。
「それでは、私は先に戻り準備しておきます」
「分かりました。私もすぐに戻ります」
私は相槌をしました。
するとシュナさんは優しく笑みを浮かべ私を励ますと、目の前から姿が消えます。
あっという間すぎて、何処に行ったのかも分かりません。
気配も完全に消してしまい、私では見つけることは不可能になってしまいます。
「ふぅ。これから忙しくなりますね」
私は頑張ろうと思いました。
ギュッと握り拳を作ると、真っ直ぐ屋敷に帰ります。
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