第21話 2人の妃殿下

「奥様ご安心ください。このニニナ、命に変えましても隊長の命令は守って見せますから!」


両手をぎゅっと握ってふんす!と意気込んでいるニニナ。


私は今から何と戦うんでしょうね?


そしてヴィーはニニナに何を命令したの?


帰ったらヴィーを問い詰めなければ。





「王妃殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう」


待たされる事30分。


ようやく王妃殿下のお出ましである。


ふわふわとした金色の髪にグリーンの瞳。


典型的な可愛い系美人である。


待ち時間が長くてニニナが殺気立ち始めていたからきてくれてよかった。


「えっと、侯爵夫人だっけ?」


「マーガレット侯爵家のキャロラインでございます」


「後妻さんなんだっけ、侯爵には子供もいるし大変だね」


私的な謁見とはいえ、この会話は無いなとキャロラインでも思う。


後ろの侍女さんも顔色が悪くなっているし、ニニナやアリアに至っては一度収まりかけた殺気が。


あ、ミリアが二人をこっそり嗜めた。


「まずは王都で有名なお菓子を買って参りましたのでそちらを。


それからこちらが我が領地で作ったローズウォーターでございます。


使い方は侍女の方にお伝えしますね」


ミリアがすすっと王妃殿下の侍女さんに寄っていく。


「これ、有名なお菓子ね、食べたかったのよ」


ローズウォーターには目もくれずお菓子の方が気になるようだ。


これはだめかな。


ヴィーごめんね、侯爵夫人としてのお仕事は失敗の模様。









「まぁ、ようこそお越しくださいましたマーガレット侯爵夫人」


王妃殿下の部屋とは裏腹に案内された部屋へ着くとすでに側妃殿下が待っていて声をかけて下った。


「側妃殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう。


マーガレット侯爵夫人キャロラインでございます」


同じようにお土産のお菓子とローズウォーターを置く。


「まぁありがとう、こちらは今人気のお菓子ね?


さらにこちらはなんで美しい瓶なのかしら。


どう言ったものなのかしら?」


ローズウォーターの方を興味深く見てくださる。


「湯編み後や洗顔後に顔や肌に使っていただくと肌のキメを整えてくれるものですわ。


私や侍女たちも使っておりますが、詳しい使い方はうちの侍女からお伝えしておきますね」


ミリアがすすすっと側妃殿下の侍女さんに寄って行って説明する。



「まぁ肌を?使うのが楽しみだわ、さらに良い香りがするのね」


「マーガレット領の薔薇の中でもとびきり香り高いものから作っております」



「薔薇から出来ているなんてすごいわ!


マーガレット領は薔薇の産地だものね」


先程王妃殿下とお会いしたからか側妃殿下との落差がすごい。


聡明と名高い側妃殿下はその能力を買われて王家に嫁いだ元侯爵令嬢で第一王子殿下をお産みになられている。


王妃殿下と国王陛下は実は恋愛結婚で王妃殿下が伯爵令嬢ということもあり色々なところから反対されながらも結婚した経緯がある。


王妃殿下は政治には興味を持たず、ドレスや宝石、流行り物やお茶会が好きと有名である。


当然王妃殿下には公務がある。


人前に出るような公務は喜んでするけれども、それ以外の執務などをするために嫁いできたのが側妃殿下。


銀糸の髪に水色瞳は一見冷たく見える色合いだけれどもとても穏やかな人柄に見える。


なお、小説のメインヒーローの王太子は王妃殿下がお産みになられた第二王子殿下の方。


恋愛結婚で産まれたヒーローだからこそ、婚約破棄して真実の愛とやらに目覚めるのだろう。


物語として読んでいる分には面白かったが実際に間近でみると契約を結んだ婚約を一方的に破棄というのは無いなと思う。


側妃殿下、第一王子をお産みになられているがこちらはいわばハネムーンベイビーで結婚当初のお渡りで授かった子供である。


王妃殿下よりも先にお子を授かったことで王妃殿下からは敵視されているらしい。


国王陛下としても王妃殿下の産んだ第二王子殿下を可愛がっているのでそれもあって第二王子殿下が王太子となっているらしい。


「侍女の方の分も用意していますのでぜひお使いくださいね」


我が家としては特にどちらの派閥には入っていない中立派ではある。


なので今回も王妃殿下、側妃殿下ともに献上した流れである。


「まぁ侍女にまでありがたいわ。


それに個人的にもマーガレット侯爵夫人にはお会いしたかったので嬉しいですわ」


ほんわか和む癒し系の側妃殿下。


ミリアやアリア、ニニナも好意的な態度をとっているよう。


「あ、あの宰相殿と大変中仲睦まじいときいて、その、羨ましいというか秘訣などがあれば教えて欲しくて」


ちらちらと首元に視線をうつしながら側妃殿下が遠慮がちに伝えてくる。


「秘訣というものは特にこれと言って私は分かりかねるのですが、側妃殿下は陛下とは?」


「・・・お恥ずかしい話ですが、私と陛下は政略結婚なので、その、最初のお渡り以外は没交渉で。


幸い第一王子も授かりましたし、寵愛やさらなるお子を望んでいるわけではないんですが」


なんと、陛下。


こんな綺麗な奥さんをもらっておいて、しかも自分の選んだ嫁が無能なので有能な嫁が来てくれたのにも関わらず放置って。


「側妃殿下は陛下をお慕いされていらっしゃるのですね」


「ええ、輿入れをする前からお慕いしていて、能力を買われての打診だと分かっていても陛下のためにできることがあればと思って輿入れしてきたのです」


ほんのり頬を染めながら話す側妃殿下の可憐なこと。


こんな奥さんを放ったらかして、王妃殿下だけ甘やかしているとは、陛下女を見る目ないね。


「私の友人にも夫婦仲睦まじい人が居ますので秘訣などがあれば聞いてみますね。


また側妃殿下の元を訪れても?」


「もちろんですわ!


ご友人というのは?」


「アルストロメリア公爵夫人とその娘もシャルロッテ様ですわ」


「あのお二方も確かに仲睦まじいと聞きますわね。羨ましいわ」


という事で今度会ったら聞いてみようと思う。


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