第10話 お茶会の招待状

「あの、公爵夫人に気に入られたか」


帰ってきたヴィーに今日のことを話す。


あの後すっかり話し込んでしまい随分な気のおけない仲になれたのではないかと思う。


アンネの夫の公爵はどうやらヴィーの元上司らしい。


もっとも文官の方ではなく武官の方。


ヴィーは若い頃武官として公爵の元で働いていたらしい。


なので公私ともに知り合いなのだとか。


もちろん先の奥様との仲が冷めきっていたのも知っていて、私のドレスを見てびっくりしたのだとか。


レースであしらわれた首回りは透けたりはしないけれどレースの隙間から痕が全く見えないわけではない。


随分と溺愛されているのだと散々からかわれたのだった。


「ヴィーが、たくさん痕をつけるから。んん!」


言ってるそばから痕をつけられる。


「リコ」


名前を呼ばれたのを合図に両手をヴィーの頭の後ろに回して目を閉じた。













翌日、昨日のお茶会に参加していた人達からのお詫びの手紙と贈り物が大量に届いた。


たかだか元子爵令嬢の後妻だと侮っていたが、公爵夫人と一緒に場を辞したことでご機嫌伺いと言ったところである。


「対応はジルバお願いできる?」


「もちろんです、奥様」


そうそう、実はジルバはヴィーの元部下なんだそう。


ヴィーが武官を止めるときに着いてきて侯爵家で働いているのだとか。


戦える家令なわけだ。


他にも使用人の中にはそういう人たちが居て、ヴィーが慕われているのがよく分かる。


「公爵夫人からのは私が返事を書くわ」


アンネからも昨日のお礼とまた来て欲しいと言う連絡が来ていた。


なんでも娘さんを紹介したいのだそう。


キャロラインより少し年上の一人娘さんだそうだ。







あれから頻繁ではないが、それなりにお茶会に参加するようになった。


正直、身のある話はほとんど無いが情報は力である。


必要そうなものはヴィーに報告した。


それに社交を疎かにするとローラにも影響するので慎重にする必要がある。


「王宮でのお茶会ですか?」


帰ってきたヴィーからもたらされたのはローラへのお茶会の招待状だった。


「ああ、おそらくリコの言っていたアウローラと殿下の出会いの場であろう」


「王太子殿下の婚約者を決めるためのお茶会という名の集団お見合いパーティと言うことですね」


つい先日ローラは5歳になった。


確かに時期的には会う。


「・・・ヴィーはどう考えてる?ローラの婚約のこと」


「家格的に一番合うのは確かに我が家だろう。・・・アウローラが望めばと言うところだ」


つまりは無理には進めないけど、アウローラが希望すれば話は別と言うところ。


果たして今のアウローラは希望するかしら。


「私は付き添いで行けるのですね?」


「ああ、頼む」


子供が小さすぎるので、母親が付き添ってお茶会をするらしい。


ローラのドレスを仕立てないといけないなぁ。


ドレスのこともあってか、お茶会は1ヶ月後。


マナーに関しはなんの心配もないローラなので、心配事は王太子殿下に一目惚れするかどうか、なのよね。







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