第6話 衝撃の真実に驚愕するのも仕方がない
俺は震えそうになる足に鞭を打ち、一歩また一歩と前に進んでいった。
すると、その足音に気づいた長谷山がこちらを振り向いてきた。
「――っ!? 誰だ!!? ……佐藤君? 君、佐藤治郎君じゃないか?」
「わ!? お前本名言うんじゃないよ!!?」
今絶賛配信中だぞ? せっかくかっこいいニックネーム考えて配信してるのに水の泡になっちゃったじゃないか!
<こいつ思ったよりも普通の名前だったんだな。それであんな無駄に小賢しい名前名乗ってたのか>
<いいじゃないか別に。男ならそういう時期もあるさ。僕は好きだよあの名前、確か『東御堂嶋サエジュウロウ』だっけ? この年頃だと考えたらむしろ渋いくらいじゃないかな?>
<正直、こんな覚えにくい名前名乗るくらいならいっそ本名の方がええやんって思うけどな。……で、どうする? あの黒騎士サマ、気づいてるで>
<普通に考えたら勝ち目は無いけど、君の友達と息をピッタリと合わせれば可能性は無い訳じゃないと思う>
俺の直ぐ後ろを飛んでいるドローンから提案を受けた。
でも合わせろって言われても……。
いざ飛び出してみたものの、あの黒鎧めっちゃ怖そう。雰囲気が殺伐としてるじゃん。ここ日本だぜ? あんなんが地上を歩き回ったら終わりだよ。とはいえ奴もモンスター、ダンジョンからは外に出ないんだけど。
でもそんな事はどうでもいい!
あの野郎を華麗に徹底的にけちょんけちょんにしないとチャンネルの登録者が増えない! はず。
その為には長谷山の野郎をけしかけて良い感じに援護する! 俺が安全に勝つ為にはこれ以外に無い。
「君がどうして此処にいるのか知らないけど。佐藤君、此処は危険だ! 今すぐ地上に戻るんだ!!」
「馬鹿野郎! 友達が化け物相手に頑張ってるっていうのに、黙って引き下がれるかよ! 俺も加勢するぜ!!」
き、決まった! なんて動画映えする台詞なんだ!!
別にコイツの事なんて友達とは思っても無いが、聞こえのいい言葉で気分を高めてやる。精々俺の配信の為に頑張ってくれよ!
「君が、まさか僕の事をそれほど心配してくれるなんて……」
へへ、感動してやがる。こりゃあ上手い事利用出来るなぁ。
<このアホ、今絶対ろくでもない事考えとるで>
<台詞と考えが正反対なの、画面越しにも分かるようだね>
<マジでイイ性格してんなこいつ>
ドローンから何か聞こえるが、ローボリュームモードにしてるからちょっと離れただけで全然聞こえなくなるな。
きっと俺の渾身の芝居に視聴者全員で感動している事だろう。
「そんなに……! ありがとう、君のおかげで勇気が出たよ。そこまで言うならわかった! 僕達二人であのモンスターを倒そう!!」
「おう! やってやろうじゃねぇか!」
こうして俺は、クラスメイトであるイケメン男子、長谷山琉斗と一緒にブラックナイトと戦う事になった。
うーむ、自分で言っておいて何だけども。これかなり無謀じゃね? だってあいつ、剣とか持ってるし。俺はと言えば、ナイフ一本だし。
どう考えても正面から攻めるのは自殺行為だ。となるとこの場合、俺の取れる最善の手段は。……やはりかく乱か。
「やーいやーい! そんな重そうな鎧着こんで満足に走れるってのかよ? ウスノロ! トロ助! 亀!」
「佐藤君!?」
俺は長谷山の周りを走り回って挑発した。
俺の狙いは、ボスの意識を引き付けて、その間に長谷山が攻撃するという作戦だ。
この作戦の欠点としては、俺が囮として危険にさらされるって事だ。
でも大丈夫だろう。だって全身鎧野郎だぜ? どう考えても俺の方が足が速いだろ。
俺は余裕の態度で後ろを鈍足で追ってきているであろう奴の姿を、挑発混じりに見る為に振り返ってみせた。そしたら……。
「ふぇ!?」
なんと俺の直ぐ後ろをついてきていたのだ! え、何で?
俺の隣を飛んでいたドローン(の向こうの視聴者達)が俺の耳元で囁く。
<聞いたことがある。確かあの手の鎧タイプのモンスターは中身が空洞で、見た目程重くも無いらしい>
<この作戦完全に失敗やな。あの黒騎士サマ、お前より速く走ってるで>
くそぉ、マジかよぉ!? あの鎧の中に人型のモンスターが入ってるんじゃないのかよ!?
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