第9話 かき氷は萌えているか?

 イヴが来て以来、手狭に成ったので押入れを整理しようとしていたら。カキ氷機が出てきた。


「うーん、まだ季節外れだね」

「主殿、この機械は何ですか?」


「カキ氷という物を作る機械だ。おや?シロップまで出てきたぞ、そういえば去年作ったな。まだ、賞味期限切れてない。せっかくだから、食べたいがもう少し暑くないと……」

「結界を張り、その空間の気温を上げる事ならできるが……」

「イヴ、本当か?」

「陰陽の秘術なら簡単なことだよ」

「佐藤先生に色々教えてもらったのだよ、ただで居候するのは良くないと、自分の力が生かせる時はなるべく貢献するように言われた」


 イヴは部屋の四隅にお札を張り、念じると、突然部屋の気温が高くなる。さすが信乃先輩をベースにして最強の陰陽師の遺伝子を持つ存在なのだから。


「せっかくだ、マジカルメイドの夏服バージョンをもって来る」


 竹野はそう言い残し家に帰って行った


「主殿、この時代は夏には水着と言うものを着るそうだな、我も着たい」

「宮姫、お前姿変えられるだろに?」

「あれは決まった服装できぬ」

「そうか。なら、イヴに頼むか……風夏はどうする?」

「私は可愛いワンピースなら……」

「では、我は主殿が隠している本のビキニとやらが欲しいぞ」


 なぬぬぬ、あの本の存在を知っているだと、どうする、ごまかすか???


「主殿、大丈夫ちゃんと捨てておいた」

「あぁ、ありがとう」


 イヴも風夏もいるのに暴露されるよりましか。しかし、本当は悲しい若い男性のたしなみのはず。そんなことをやっているうちに竹野が帰ってきた。大きな荷物中身はあれだろう。


「よし、十分まて」


 やはり、隣の部屋に行き着替えてくるようだ。


15分後


「マジカルメイド彩萌ちゃん参上」


 何時ものメイドセットが水着風である。しかし、よく見るとこれは魅力的な組み合わせである。


 宮姫も白いビキニをいつの間にか来ている。宮姫も竹野に劣らず魅力的である。


 風夏もフリルの付いた可愛い水着を着ている。


 少し風夏はかなり恥ずかしそうである。まるで、恋する乙女が初めて好きな人の前で水着になったような感じである。


 さて、カキ氷を作るか、氷をもってきて『カシャカシャ』カキ氷を作り始める。


「私が一番、最初に食べる!」


 竹野は相変わらず自己主張の強いやつである。だか、それを取ったら竹野はただの……。


 イヤ、止めておこう。


「我の方が先に食べたいぞ」


 やれやれ、困った者たちだ。譲り合いの心は無いのかな。


「では、風夏が一番で良いだろう」

「何故?」


 竹野が聞いてくる。やはり、竹野の方が自己主張的な物は強いか。


「そんなの当たり前だろ、竹野は何も出来ないが、風夏は歌がある。一番貢献しているのは風夏だろ?」

「うーん……」


 竹野の負けである。少しいじけてしまったが問題なかろう。


「それで風夏、シロップは何が良い?」

「イチゴは良いです」

「竹野は?」

「メロンで」

「宮姫は?」

「みかんは無いのか?」


 なら、代わりにオレンジでと……。


 俺は、せっかくだし、ならミックスしてみるか。


 しかし、面白い回答が欲しかったな。例えば『鰻のタレ』とか『おでんの汁とか』だ。


「竹野お前の答えには減滅したぞ、もう少し考えて答えてくれ」

「何で?」

「色々あるだろ『マッチョの汗』とか『女子の汗』とか……」

「お前は私を何だと思っているのだ?」

「ただの変態だろ」

「私は『マジカルメイド』以外一般人だぞ」


 認めるかよ、確かに『マジカルメイド』以外は普通だが、その比率が大きいのでやはり変態だな。


「しかし、暑いな、俺も脱ごうかな?」

「何を言い出す、お前の裸など誰が見たい?そうゆうことが出来る顔になってから言え」


 普通なら喧嘩になるのだが、竹野は相変わらず厳しいが、お互いそれぞれの良いとこを認めているから言えるのだ。


 仕方がないカキ氷でも食べるか。頭にキーンと来る、暑いときにはこれに限るね。あれ、イヴが居ない?


 すると、スパッツ型の水着姿で現れる。


「じゃん、どう?」

「どこで手に入れたの?」

「佐藤先生がネットで買ってくれた」

「何故、水着を?」

「室内気温の上昇の秘術を教えてもらった時、必要になるだろうと言って」


 佐藤先生こうなる事をよんでいたのか。


「それで、これから何をやる?」


 竹野がつまらなくなってきたようだ。


「何かゲームをやりたいね。カキ氷の早食い大会はどうだろう?賞品はカキ氷食べ放題で」


 竹野は試しにガツガツと一杯のかき氷を速攻で食べ終わると。


「カキ氷の早食い大会の賞品にカキ氷食べ放題は無かろう」


 どうやら、試してみてきつかったらしい。


「自分でゲームを提案しておきながら否定するとは、相変わらずわがままな奴だ。なら、カキ氷機を賞品にしよう」

「とにかくやろう、コンビニ行って大量の氷買ってくる」


 さすがに、氷の重さと資金面で竹野の協力を得てコンビニに向かう。そして、コンビニからの帰り道、竹野に前から言おうと思ったことが有るので良い機会だから、聞こうと思う。


「竹野?一度聞きたかったのだが、何故あそこまで、宮姫や風夏と仲良くできる?あの二人がこの世の者で無いことは分かっているはず?」

「私は子供の頃から、霊的存在を感じることが出来た。しかし、それは決して良い者ばかりではなく。時に、怨念、未練、呪、など。辛い経験もした。しかし、あの二人は違う、私を見てくれる。この喜びはお前も同じはずだ」

「すまない、つまらない事を聞いて、確かにそうかもしれない……」

「分かったなら帰るぞ」



 そして、大量のカキ氷が作られ全員で早食い大会を始める。しかし、早食い大会などやるべきでなかった、頭がキーン、キーン、これはキツイ。宮姫や風夏は霊体のはずなのに苦しんでいる。


 結局、竹野が一番になり、カキ氷機が竹野の物となった。

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