第6話

 俺は現在――。

 激しい目眩に襲われていた。


 ねーねー。


 フツー、お茶ってリビングで飲む物じゃないん?

 

 どうして、黒川さんの部屋へ通されたのだろう?

 

 はあ……。


 しかし、なに、この甘い香り?

 女子の部屋って極楽なの?

 いや、この場合、浄土の方か。

 

 何にせよ。

 どうしたらいいのか、わからない。

 まず、このまま息をしていてもいいのか?


 はあ……。

 お家に早く帰りたいよー。

 

 そんなことを思いながら、とりあえず最低限のマナーを守って、あまり部屋の中を見ないようにしていると、部屋の扉が開いて黒川さんが入ってくる。


「柏田君、お待たせ〜」


 ニコニコした顔で、淹れたての紅茶とクッキーをテーブルへ置く黒川さんと、開いた扉の隙間から、足をプルプルさせた白く長い毛をしたチワワが入って来る。


「あーっ!花さん!勝手に入って来たらダメだよって言ったのにぃ」


 黒川さんの珍しく慌てた声に、耳をピクピクと反応させながらも、なぜか白いチワワは真っ直ぐに俺の方へ向かって歩いて来ると、ぽふっと迷わず膝の上へ乗り、すぐに全身を預けてきた。


 きゅん……。


 と、初手で鷲掴みにされる俺氏のチョロいハート。


「か、柏田君、ごめんねー」

「いや、大丈夫。それより何で敬語?」

「花さん、あたしより一か月ほどお姉さんだから」

「じゃあ、十六歳くらい?」

「うん」


 おおん。

 お犬様の年でいうと八十歳くらいか……。

 すげー年上のお姉さん。

 とりあえず、頭を丁重に優しく撫でさせていただくと「ほう」と気持ち良さそうに目を細めていらっしゃる。


「いいな……」


 ん?

 黒川さんが何かボソッと言ったような……。


 あと、何でプクゥーと両頬を器用に膨らませているんだ?


 俺が頭にハテナを浮かべていると、隣へちょこんと腰を落とす黒川さん。

 

 そして、体育座りをしながら、紅茶のカップを両手で持つとクピクピと飲み始めた。


 んん? 

 ちょっと動いたら、肩が触れそうなんだが……。

 

 あのー急に距離感おかしくないですかねー?

 


 ◇◇◇



 沢山、応援や評価をいただいたので、あと一話、更新させていただきます。

 いつもありがとうございます!


 

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