第10話 神楽とのお話
立ち直れていない俺は、今日もベッドに座っていた。
兄さんはスゴイ人だった。
誰からも頼られて、
誰からも信頼されて、
誰からも尊敬されて、
誰からも愛されていた兄さん。
そんな兄さんが”俺”のせいでいなくなってしまった。何の役にも立っていない俺のせいで。
「俺が‥‥俺が‥‥俺が死んだ方が‥良かったのかな?」
そんなネガティブな言葉ばかりが溢れて来る
「そんな訳ない!直人が死んだ方が良いなんてこと、絶対にない!!」
「か、神楽?‥‥ど、どうしてここに?」
神楽が俺の部屋を勢い良く開けて、俺のネガティブをぶった斬る。
「直人が全然、学校に来なかったから心配になって来たの!」
「大丈夫だよ、俺は‥‥大丈夫だよ。だから、ここに———
———ダメ!そんな顔してる直人を置いていける訳ない!」
「‥‥‥、」
俺だって、分かってる。自分が今、ちょっと危ういことくらい。でも、こんなことに神楽を巻き込みたくない。
「私は‥‥昔からずっと、直人に助けられてきたの!だから、そんな私を‥気遣った顔で見ないで!今度は私に助けさせてよ!!」
「!?、‥‥‥俺は神楽を助けたことなんてない。俺たちを助けてくれてたのは、兄さんだ‥‥。」
そうだ、兄さんだいつも誰かを助けて、誰かの役に立てていたのは兄さんだ。
「直人は‥‥覚えてないの?私達が小学校1年生の時、溺れた私を助けてくれたのを‥‥。」
「あ、あれは‥‥俺たちを最後助けてくれたのは兄さんだ。俺じゃない、俺は‥‥俺も溺れてただけだ。」
俺は、誰も助けられていない。
誰かの役に立ててなんかいないんだ!
「そう‥‥直人は”そう”思ってるだね。‥‥でもね、私はね、直人があの時、来てくれて本当に嬉しかたんだよ?」
「‥‥‥‥!!」
「溺れて心細くなった時に、すぐに直人が来てくれて、『あぁ、大丈夫だ』って思ったんだよ?」
「そ、それは‥‥そうかもしれないけど———
———私の本当の気持ちを否定しないで!」
‥‥あぁ、また”同じ”ことを言われてしまった。兄さんにも注意されたのに‥‥。
「私は‥‥私は‥そんな直人だから、好きになったの!」
「えっ!!?」
「‥‥だから、今日ここに来たのは全く下心がなかった訳じゃない。」
「‥‥‥。」
衝撃的な言葉で頭が真っ白になってしまった。
「聞かせてよ、直人がどう思ってるか‥‥。」
「お、俺は‥‥」
どうしよう、上手く答えがまとまらない。
「‥‥ごめん、勢いに任せて、強引過ぎた。返事はまた後日でも———
———待って!今‥‥答えるから。俺は‥‥‥神楽が好きだ!」
「う、ん‥‥。」
神楽は凄く嬉しそうで、そのことが堪らなく嬉しかった。
「でも、俺は”まだ”神楽と付き合えない‥‥。」
「”まだ”?‥‥それって、どういうこと?」
「ごめん、言葉が足りてなかった‥‥。俺は神楽が好きだ‥‥けど、まだ、心の準備が出来てない‥。だから、心の準備が出来た時に俺から告白をする、それまで待っていて欲しい‥‥。」
「分かった、待ってる‥‥ずっと待ってる‥‥!」
神楽は俺に、とびきりの笑顔を見せた。
‥‥俺のやっていることはかなり酷いことだと思う。
好きだって言って、待たせているうえに、その待つ時間も定かではない。
もしかしたら、1ヶ月で終わるかもしれない。
もしかしたら、1年経っても、10年経っても終わらないかもしれない。
‥‥でも、だからこそ、俺は神楽に気持ちをもう一度伝える。何年経ってでも。
これで一旦、終わりです。
あとがきも一応、投稿したので是非、見てくださーい。
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