闇からの光 - 中学校の勇気と希望の物語

O.K

第1話:運動場に立っている人

ある中学校の生徒たちには、伝説として語り継がれる恐ろしい出来事があった。その話によれば、生徒たちが下校して空が薄暗くなると、学校の運動場に斧を持った鎧を身にまとった人物が現れ、ずっと立っているというのだ。


この話は、校内で囁かれる都市伝説として始まった。初めはただの噂に過ぎなかったが、やがて何人かの生徒たちがその恐怖を目の当たりにしたと言われていた。彼らの証言によれば、その人物は常に同じ場所で立ち続け、一切動くことなく、ただただ見つめているだけだったという。


その存在は、学校中の生徒たちにとって脅威となった。放課後になると、生徒たちは必死にその場所を避け、できるだけ早く家に帰るようになった。友達同士で通り抜ける際には、ひそかに話し合いながら、恐怖心を共有していた。


ある日、一人の勇気ある生徒がその人物に立ち向かうことを決意した。彼は友人たちに、自分が本当にやるべきことだと確信していたと語った。彼は斧を手に取り、鎧を着込んで運動場に向かった。


夕暮れ時、運動場に到着した彼は、不気味な雰囲気に包まれた空間を見渡した。風がひんやりと吹き抜け、遠くには鳥の鳴き声が聞こえるだけだった。彼は怯むことなく、歩みを進めていった。


そして、目の前に立ちはだかった。斧を持った鎧を着た人物は、彼をじっと見つめていた。彼は言葉を発することなく、ただその存在だけが生徒たちに恐怖を与えるのだと感じた。


勇気を振り絞り、彼は言葉を発した。「何者なのですか?なぜここにいるのですか?」と尋ねると、鎧を身にまとった人物はゆっくりと頷いた。そして、不思議な声で言った。「私はこの学校の過去の出来事の象徴だ。私の姿は、この場所に潜む闇を示している。」


驚きながらも、彼は問いかけた。「では、その闇を教えてください。なぜこの学校には闇があるのですか?」


鎧をまとった人物は深いため息をついた。「この学校には、かつて忘れられた秘密があった。過去の出来事が未だにこの場所に囚われているのだ。私の姿は、その闇を思い出させるためにここに立っているのだよ。」


その言葉に背筋が凍りつくほどの恐怖が生徒を襲った。彼は知りたくない出来事を思い出すことを躊躇したが、勇気を振り絞り、尋ね続けた。「どのような出来事があったのですか?」


鎧をまとった人物はゆっくりと語り始めた。「この学校では、昔、一人の教師が生徒に対して悪意を持っていた。彼は虐待を行い、生徒たちは苦しめられたのだ。それが明るみに出ることはなかったが、学校にはその悲劇が残されている。私の姿は、その過去の痛みを思い出させるためにここに立っているのだよ。」


生徒は言葉に詰まり、その恐怖に立ち尽くしてしまった。鎧をまとった人物は黙って微笑みながら立ち続け、彼の前から姿を消した。その後、学校では彼の姿を見ることはなくなった。


それ以降、学校の生徒たちはその恐怖の存在を背負いながらも、教師や生徒同士の絆を深め、過去の出来事を忘れ去るように努めた。鎧をまとった人物の姿が忘れられることはなかったが、それは彼らにとっての警鐘となり、再び同じ過ちを繰り返さないようにするための戒めとなったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る