第1話 2回目の恋

「やめて!」


 青葉ちゃんは、叫んだ。


「やめて・・・・、お願い。


真を、大切な存在を傷つけないで・・・・」


「ふうん。


それで?」


 カンツォーネさんと、緑ちゃんは、真君の攻撃を止めて、青葉ちゃんをにらみつけた。

 真君は何回も剣で刺され抜かれたり、カンツォーネさんに何回も蹴られたせいで、血だらけの状態で、目を閉じていた。


 このままだと、真君が死んじゃう・・・・!

 だけど、私は恐怖のあまり、声もでないし、真君の方に駆け寄ることもできない。


 もし、私も攻撃されたら・・・・?

 そんなことばかりが頭の中で映像としてでてくる。


「あたし、真を守ってみる」


「無理だって!


あんなのに勝てるわけがない・・・・」


「あたし、真が大切な存在だから、そんなにひ弱でも守りたいの!」


 こうして、青葉ちゃんは真君の方に駆け寄ったけれど、戦闘力がないために、カンツォーネさんにつかまってしまった。


「離して!」


「こいつ、人質にちょうどいいわね?」


「カンツォーネさん、もしかして、女の子にも手を出しちゃいますか?」


「やめてちょうだい。


女の子同士で、そんな趣味はないわ。


だけど、痛めつけた方がいいわね。


あたしと、緑に逆らった罰よ」


「カンツォーネさん、さすが!」


「ということで、この青頭は預かっておくから、真の怪我の治療はしておくね。


今度こそ、真に最大で、最高の絶望を味わうことになるわ」


 こうして、カンツォーネさんは青葉ちゃんを連れて、緑ちゃんとともに姿を消した。

 

 私は真君の方に駆け寄り、電話して、救急車に運んでもらった。


 私は、真君が入院中して、青葉ちゃんがカンツォーネさんにさらわれたことも話した。


「早く、青葉を助けにいかないと・・・!


紫帆と同じ歴史を繰り返したくないし、青葉は俺の本当に大好きな人だから」


「こんな怪我で、行けないって・・・・!」


 紫帆ちゃんも殺されて、緑ちゃんは私たちを騙すためだけに近づいて、青葉ちゃんはカンツォーネさんにさらわれた。

 それに、私は真君が好きだけど、真君は青葉ちゃんが好き。

 親友だけど、ライバル心が捨てきれない自分がいた。


 私は真君が退院するまで、何回も真君のいる病院に向かった。

 

「真君、今日も来たよ」


「ありがとう。


あれから、数か月たつけど、青葉は大丈夫なのかな?」


「悔しいことだけど、今は助けに行けないよね」


「俺も怪我が少しずつだけど、治ってきているから、退院が認められたら、青葉を助けに行くよ」


「そうだね。


青葉ちゃん、無事だといいんだけど」


「カンツォーネのことだから、こればっかりは保証できないな。


もしかしたら、生きてないんじゃないかって不安が押し寄せてくるんだ」


「大丈夫。


きっと、大丈夫。


そう思うことにしようよ」


「だよね。


わからないことに、不安を感じてもしょうがない。


早く怪我を治すことだけ、今は考えなくちゃ」


 真君はしばらくしたら、怪我が治り、退院することになった。


 こうして、私と真君で青葉ちゃんを助けに行くことにしたけれど、居場所がわからなかった。


 そんなところで、緑ちゃんが現れた。


「緑ちゃん?」


「やっと、退院したのか。


退屈しちゃったよ。


でも、まあ、青葉のおかげでいい暇つぶしになったよ」


「緑?


どうして、そんなことを?


青葉に何をした?」


「そう焦るなって。


今から、カンツォーネさんの居場所を教えるから、これで落ち着くんだ」


「質問に答えてない。


どうして俺たちを騙すことをしたのかということと、青葉に何をしたか答えて」


「やんなるなあ。


真は、一度気になることがあると、頭から離れなくなるかあ。


数年も耐えられた自分に尊敬するわあ。


どうして、うちが真たちを騙すことになったとか、青葉がどうなったのか自分の目で確かめに行けばいいじゃん。


敵であるうちが、どうして詳細とやらを教えなきゃいけない?


うちはあんたが嫌いなんだし、関わりたくないんだよ。


それくらい、わかってほしい。


って、あんたに行っても無駄か。


とにかく、居場所だけ教えておくから、そこ向かえ。


うちは、後のことは知らん」


「緑・・・・」


 緑ちゃんは私に居場所だけつたえたら「じゃあな」と一言で去っていった。


「居場所を簡単に教えるとか、明らかに罠だよ」


「そんなことは関係ない。


青葉のことを一刻も早く助けなきゃ」


「無謀すぎるって」


「俺は、無謀なんかじゃない。


ただ、青葉を助けたいだけだ。


行くぞ」


「真君!」


 真君は走っていったので、私はあわてて追いかけた。

 

 おかしい。

 緑ちゃんに、騙されたということは、今回もそうかもしれない。

 まず、その教えられた場所に、青葉ちゃんはいるの・・・?


 こうして、二人で向かった場所は、倉庫だった。


「青葉、今助けてやるかな!」


 だけど、誠君が駆けつける前に現れたのは、知らない男の子。


「久しぶりだな、真」


「勇気・・・・」


 勇気?

 もしかして・・・・。


「せっかく、従兄が来てやったのに再会を喜ばんないのか?」


 やっぱり、真君の従兄だ。


「だって、カンツォーネが誘拐したんじゃ・・・・」


「誘拐したのは、間違いなくカンツォーネ。


だけど、とっちゃた」


「とったって?」


「俺が奪って、お前の幼馴染を好みのタイプに変えたんだ」


「青葉は、俺の大切な幼馴染・・・・」


「幼馴染だけど、真の物じゃないよね?」


「信じない」


「俺の言葉が信じられない?


なら、本人の言葉で実証してもらおうか」


 勇気さんの後ろにいた、青葉ちゃんに問いかけた。


「青葉は、俺と真、どっちが好き?」


「勇気さん」


「真のことをどう思っている?」


「ただの幼馴染です!」


「今、どんな気持ち?」


「最高です!


勇気さん、ありがとうございます」


「今の発言、聞いたか?


俺好みに豹変してしまって、俺なしじゃ生きられないぐらいになってんの」


「勇気、何をしたんだ?」


「うーん、青葉のことをカンツォーネから助けたいだけ。


これで、認めた?」


「勇気さん、大好きです・・・・」


「ああ、俺もだ。


ということで、真の両片思いはここで終わったということで」


「勇気、またとったのか?」


「お互いの合意の上でだ。


青葉もそうだろ?」


「はい!」


 誠君はその場で泣き崩れた。


「青葉・・・・!


青葉・・・・!」

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