霧と露の街で
朝定食
プロローグ
汚れた手
幼馴染のしゃくり上げるように泣く声を聴いたのは2年と少し前のことだった。
その時は確か、アタシがツユ、ー
そんなことを思い出しながら、ツユの元へ急ぐ。電話ではテンパってるのかあんまり内容は分からなかったけど、兎に角焦ってるようだ。自転車をツユの待つ、近くの山の展望デッキ前にある小さな公園に急がせる。
山の端の方に着くと、自転車を降りて近道である獣道をスニーカーのままで走っていくと、へたり込んでいるツユ、そして彼女の手に握られたカッターナイフ………嫌な予感がする。
「き……霧ちゃん。」
泣き腫らして目を赤くしたツユがアタシの方を振り向く。
「ツユ………ちょっと、これ……」
「どうしよ……ねぇ、私、どうしたら…………霧ちゃん…助けて……」
助ける?……アタシにどうしろって?
思考がまとまらない。
取り敢えずツユを立たせて、手に握ったカッターを離させる。
「こうなった理由………ツユ、教えてくれるよね?」
アタシがそれを指差すと、ツユもそちらに視線をよこすと、すぐに嘔吐感に襲われたようで口に手を運び、急いで顔を背ける。
アタシもできるなら顔を背けたかったけれど、そうはいかず、どこか冷静なまま、血生臭くなって置き物のように冷たく動かなくなった教師の木下の遺体から視線が離せなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます