霧と露の街で

朝定食

プロローグ

汚れた手

幼馴染のしゃくり上げるように泣く声を聴いたのは2年と少し前のことだった。



その時は確か、アタシがツユ、ー露原つゆはら 玲奈れいなーと同じ志望校にぎりぎり合格できて、ツユの方が嬉し泣きしたんだっけ。



そんなことを思い出しながら、ツユの元へ急ぐ。電話ではテンパってるのかあんまり内容は分からなかったけど、兎に角焦ってるようだ。自転車をツユの待つ、近くの山の展望デッキ前にある小さな公園に急がせる。



山の端の方に着くと、自転車を降りて近道である獣道をスニーカーのままで走っていくと、へたり込んでいるツユ、そして彼女の手に握られたカッターナイフ………嫌な予感がする。


「き……霧ちゃん。」


泣き腫らして目を赤くしたツユがアタシの方を振り向く。


「ツユ………ちょっと、……」



「どうしよ……ねぇ、私、どうしたら…………霧ちゃん…助けて……」


助ける?……アタシにどうしろって?

思考がまとまらない。


取り敢えずツユを立たせて、手に握ったカッターを離させる。



………ツユ、教えてくれるよね?」


アタシがそれを指差すと、ツユもそちらに視線をよこすと、すぐに嘔吐感に襲われたようで口に手を運び、急いで顔を背ける。


アタシもできるなら顔を背けたかったけれど、そうはいかず、どこか冷静なまま、血生臭くなって置き物のように冷たく動かなくなった教師の木下のから視線が離せなかった

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