名残雪(day29 名残)

母は五歳の時に亡くなった。


蝉の声が際立つ日だった。


以来母の命日には雪が降る。


その日は同時に俺の誕生日。


死期を悟った母は未来のお祝いメッセージを録音。


「もう小学生ね」


「次は中学生」


どれも涙声。


二十歳になり最後のメッセージを聞きその足で墓参りへ。


「もう大丈夫。大人だから」


雪は止んだ。

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