実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!? だが気付いた時にはもう遅かった!
第68話 みんな、戻ってこぉーーーーーーいっ!!!
第68話 みんな、戻ってこぉーーーーーーいっ!!!
遥がなんか可愛い走り方でやってきた時は衝撃を受けた。
もしかして魔物肉を食べたせいで性格が変わってしまったのかと。
でもそんな事は無かった。
走り方かわいいって正直に言ったら頬を叩かれてしまったし。とても解せない。
「それどころではありませんのよ。彼方、母桃さん、今すぐ出口へ引き返しましょう」
「えっ、何かわかったのか?」
「はい。ですが今はひとまず、訳を聞かずにわたくしを信じてくださいませ」
「……わかった。みんな、出口に戻ろう」
しかしまさかあの遥が「自分を信じて」と言うなんてな。
以前は有無を言わさず従わせようとしていたのに。
でもこう言われたら信じてみたくなるじゃないか。
何か事情があるのだろうし、遥が無駄な事をするとは思えないから。
そこで俺達はひとまず出口へと戻る事に。
とはいえ帰りはすぐで、あっという間に辿り着いてしまったが。
それで遥が一旦外に出てお花を摘んできた後、再び入口前に集まる。
外で委員会の人達が不安そうに見守る中、やっと遥が口を開いてくれた。
「ではメンバー全員を入口に呼び戻したいのですが、何か手段はありますか?」
「探索は中止するって事か?」
「ええ。そもそも探索など無意味だったのです。それを証明するためにも、まずは全員を戻さなければなりません」
「遥がそう言うならやってみる事にしよう。そうだな、どうするか……」
全員を戻すのにも何かしら理由があるんだろうな。
なんでその理由を喋らないのかはとても気になるが、今は黙って従う事にしよう。
さて、みんなを呼び戻すにはどうするか。とても悩ましい。
メガホン一つ持ち込むのでも裸に剥かれるのは嫌だしなぁ。
外からだと音が遮られて届かないから拡声器は使えないし。
――いや、待てよ?
拡声器か、それならなんとかなるかもしれないぞ。
「つくし、ちょっと協力してくれるか?」
「うん? いいよー!」
「二人で何をする気ですの?」
「ちょっと試したい事があってね」
「?」
もしもあの時つくしと絆ライディングができていたのなら、今回も可能なはず。
だったらコンとは違うアプローチで彼女の能力を最大限に引き出す事ができるかもしれない。
そう考えた俺は二人でまたダンジョンへと入る。
それで少し進んだ辺りで立ち止まり、つくしへと頷いた。
「合図をしたらみんなを呼んでほしい。俺がマナを使って声を強化させるから。君の発声量ならおそらくできるはずだ」
「叫べばいいんだね?」
「ああ。それじゃあ準備を始めるぞ!」
「うん!」
「い、一体何を始めるつもりですの?」
「何かしら、私にもわからないわ」
まず俺がつくしの背後に立ち、両肩へ手を乗せる。
その上で集中し、マナを練り、彼女へと送り込むイメージを脳内で固めた。
マナティクスライド――あの力がもし本当につくしとも発揮できるなら。
なら、今度は俺が彼女に乗る。
マナを通じて二人の力を合わせ、能力を純粋に強化するんだ。
変化能力を持つコンが俺の意思に合わせて武器へと変わるのと同じように。
「彼方の体が光って……!?」
「つくしに流れていく!?」
そうだ、この感じだ。
間違い無い。俺は今、つくしと力を一つにできている。
それはきっと彼女も同じように感じられているはず。
だったら今から何をしたいのかも、もうわかっているだろう?
そんな俺の心の揺れ動きに気付いたのか、つくしが両腕を広げる。
果てしないほどに大きく息を吸い込み、自慢の胸をさらに膨らませ始めたんだ。
そう、これこそがつくしの真価。
体力お化けの正体である、異常なまでの肺活量!
――つくしの肺活量は常軌を逸している。
カラオケで絶叫系の歌を一〇分連続で歌い続けても息切れしないほどに。
加えてマイク無しでルームを無視する程の発声量まで実現可能だ。
なら俺がその声を最大限に強化してやれば、こんなダンジョンの果ての果てにまで届かせる事など造作も無いはず!
「よし、つくし、準備ができたぞ!」
「んっ!」
さぁ実現してみせろ、つくし!
君にしかできない、君だけの叫びをダンジョン中に響かせるんだ!
つくしが首を引きつつ口を開く。
後ろからでもそうわかるくらいのマナの波動が光となって漏れ出しているんだ。
ああそうさ、この輝きこそ君の力――
「みぃんなあああああーーーーーーもどってぇこおおおおおおいっっっっっ!!!!!!!!!」
――これが【つくし式・
突如、場が激震する!
周囲の壁に亀裂が走る!
それも崩れる程に強く激しく!
あまりの強烈だったがゆえに、さらには壁がひしゃげ、押し広げられた!
しかも放たれた声が通路を突き抜ければ、無数の石破片を撒き散らす。
まるで超弩級の台風に晒されたかのようだ!
景色さえ歪ませるほどにすさまじいとは!?
……想像以上の威力だ。
こうなるともはや攻撃の域だな。
みんな、この声に吹き飛ばされてなければいいけど。
あ!
そう思って、緊張のまま振り返ってみたのだけど。
「ぎいやぁああああああ!!!!! 耳が! 鼓膜があぁあぁあ!!!!!」
「くかかっ!? か、かはっ……」
遥とモモ先輩がダンジョンの外で転がってのたうち回ってた。
今の一撃を近くでモロ喰らってしまったからか吹き飛ばされたようだ。
ああすいません、外にいてって言うの忘れていましたね……。
待機ヒーラー二人は外にいてくれて無事だったのが不幸中の幸いか。
なので仕方なく二人を引きずってダンジョンの中へ。
すかさずつくしの回復魔法で無事治癒する事に成功。
もちろんその後は二人して箱型のお花畑に直行した訳だけども。
そんな訳で戻って来た二人にはおとなしく土下座する事になった。
ほんっとすんまっせぇーーーんッ!
と、とにかくだ!
あとはみんなが戻ってくるのを待つだけ。
そうすればきっと遥が何かをしてくれるはずなのだから。
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