実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!? だが気付いた時にはもう遅かった!
第35話 エースと呼ばれる前にトップランク入り!?
第35話 エースと呼ばれる前にトップランク入り!?
「最近、委員会総会でトップオブトップス枠の拡充の話があったんだ。そこで新北関東プロチームが私達を推薦したらしい」
「あんのコーチ余計な事をッ! 授業が遅れちゃうだろぉ……!」
意外な展開にみんなが驚きを隠せていない。
まさかエースとか言われる前にトップランク入りなんて予想もしないだろう!?
あと授業とかどーすんだ! 俺まだ数学の内容把握できてないけど!?
明日土曜だから自習でもしとこうかと思っていたんだが!?
「ま、まぁしゃーないねぇ、選ばれたもんはさーあ~」
「とか言いつつ口元笑ってますけど部長?」
「イッシシシ! 笑わない訳ないよー彼方! トップオブトップスになれば攻略報酬が普通のさ、三倍とか行くらしいし!」
「ウヒヒヒヒ! 通常の三倍っ! リーマンの三倍っ!」
こ、この金の亡者たちめ、授業の事とか完全に頭にねぇ!
俺達の本分は勉強だって事を忘れた目してやがるッ! もう瞳が¥マークだ!
「とゆーわけでぇ、今日は解散! 予習は明日の移動時にしまーす!」
「「はーい!」」
もうこうなったら明日は俺も旅行のつもりで挑むとしよう。
な、なんだかんだで県外に出たのはダンジョン戦の時が初だったし。
九州かぁ、どんなところなんだろう。
家族へのお土産はどうしようかな。
あ、おやつを買ってから行かないと。
「彼方、一緒にかえろ!」
「え、あ、ああ」
「待ってー、あーしらも一緒にいくぜ~」
まぁみんなもそれほど緊張はしていないみたいだ。
結局は自分達のスタイルで戦うしかないからな、慌てても仕方ないってわかっているんだろう。
軒下魔宮で鍛えてもあるし、心配はいらないのかもしれない。
そう安心していたら、またつくしに手を引かれてしまった。
いけないな、考え込む癖を早く治さないと。
――こうして俺達は四人揃って校舎を出た。
でもみんなはまだ浮かれているのか、「カラオケいかね?」とか言い始めている。
明日は九州入りだっていうのにホント元気だよな。
ま、ちょっとくらいなら付き合うのもやぶさかじゃないけどね。
「お待ちなさい、そこの四人――宝春学園ダンジョン部の皆さま方!」
そう思っていた矢先、突然呼び止められた。
しかもまたしても校門前……デジャヴを感じざるを得ない。
なんだこの校門、イベントを引き寄せる力でも秘めているのか……?
「えっ、あれって!?」
「嘘、なんでこんな所にいるの!?」
周囲からも別の生徒の驚く声が聞こえてくる。
そんな中で相手の姿が露わとなって――
――えッ!!?
「えッ!? もしかして
「うっそー!? トップオブトップスのナンバーワンじゃん!? どーしてここに!?」
「当然ですわ。あなた方がトップオブトップス入りを果たしたと聞いてお伺いに参りましたの」
あ、ああ……そ、そんな、そんなバカな!?
司条遥、な、なんでコイツが……!?
「初めまして皆様。わたくし、麗聖学院高等部ダンジョン攻略チーム所属であり、トップオブトップスの頂点の座をいただいております司条遥と申します」
「て、丁寧なごあいさつをど、どうもぉ~」
「本物のトップスやば! 金髪縦ロールとか生で初めて見たやばあああ! まだ現存してたんだ!」
「そこ、髪型を絶滅危惧種みたいに言うのはおよしになって」
「フフフ、さすがお嬢様系プレイヤー、輝いて見えるわ……! このままでは私の深淵が――」
「う、うう……」
「あれ、か、彼方どうしたの?」
胸が痛い。
過呼吸で苦しい。
体の震えが止まらない。
ダメだ、もう立ってもいられない……!
「ちょちょ、彼方っち!? 膝着いて大丈夫なん!?」
「あ、ハッ、ハッ、あぐ……!」
「まさか司条遥に一目ぼれしちゃったとか!?」
「オーッホッホ! 美しいとは罪ですわね!」
「そ、そんな訳が、ない……!」
クソクソクソ! なんなんだよ!?
なんでコイツがここにいるんだよ!? おかしいだろ!
お前はいいとこ出のお嬢様で、上級市民で、俺達を見下していたはずだ!
そいつがなんだって金稼ぎプレイヤーなんてやっているんだよ!?
「まぁいいですわ。ならばそのままお聞きなさい、間宮彼方」
「え、なに、もしかして告白!? 告っちゃう!?」
「そこォ! 少しお黙りなさい!」
「あい!」
ま、まったく、相変わらずだ。
この高圧的態度、昔からちっとも変わっちゃいない!
「間宮彼方、あなたをわたくしのチームに勧誘します。その力をわたくしの下で最大限に活かすつもりはありませんか?」
「なん、だと……!?」
「もし来られるのであれば麗聖学院への編入手続きはこちらでやりましょう。それと雇う為の報酬も攻略報酬とは別にお支払いいたしますわ」
しかも言うに事欠いて俺を勧誘だと!?
俺の事を覚えていないのか!?
……それも当然か。
お前にとっちゃ俺なんて覚える価値も無いちっぽけな一庶民だろうからな。
だが俺は忘れちゃいないぞ。
お前だけは絶対に忘れる訳がない!
俺に深いトラウマを植え付けた事を!
俺を大嘘つきよばわりして皆を遠ざけたお前だけは……ッ!!
「だんじて断る! 誰が、お前なんかと、組むものかよ……!」
「なっ!?」
「だから帰れよ……! 俺に関わるな、もうッ!」
「か、彼方……?」
そんな奴とはもう関わりたくない。
顔も見たくないし思い出したくもない。
頼むからもう、俺の前から消えてくれ……!
「……そうですか、わかりました」
「わかってくれたか……」
「ではこうしましょう。明日招集されている大分での攻略戦において、どちらが多くポイントを稼げるか勝負なさい。それにあなたが負けた場合、強制でわたくしのチームへ加入する事とします」
「ッ!?」
こいつッ!? ちっともわかってない……ッ!?
くっ、そうだった。こいつは人の話を聞かない奴だったんだ。
自分がそう信じたら考えを一切捻じ曲げず、相手が引くまで押し通す!
その上、負けた相手を死体蹴りのごとく徹底的に追い打ちして打ちのめすんだ。
その結果、俺以外の子どもも何人か、学校から――いや、街からいなくなった。
思い出したくもなかったよ、そんな嫌な思い出は!
「もし逃げるようでしたら負けたものとみなしますので覚えておくように。それではごきげんよう」
遥が爽やかな笑みを零しながらふわりと踵を返す。
けど俺にはあの顔がいやらしくあざ笑う悪魔にさえ見えた。
どうしてこうなっちまったんだ。
どうして俺は、あの悪魔にまた因縁を付けられた!?
俺はただ平穏に暮らしたかっただけなのに……っ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます