第31話 ダンジョンと軒下魔宮の関係性とは(つくし視点)

 静かにしないと澪奈パイセンにつまみ出されそうだったので大人しくする事に。

 それでやっと落ち着いたので、みんなで彼方を囲んでみた。


「本当はさ、みんながここまで来れるとは思ってなかったんだ。実は俺の知り合いでここまで来れた人はみんなだけだからさ」


 だけど今度は彼方がなんだかしんみりしてる。

 笑顔だけどなんだろう、とっても悲しそう。

 あたし達が初来客ならもっと喜べばいいのに。


「それってなんかさぁ軒下魔宮のせいだけじゃないってカンジ?」

「うん。実は俺達、この町じゃいいように思われていない人間なんだよ。この家もコンも認識されてなくて、そのせいで昔大ウソつきだって広められちゃったからさ」

「そうなんだ……」

「うん。なんか親に聞いたら、『この家は間宮家を信頼する人じゃないと来られない』って事らしいし」


 うーん、そんな事があったんだなー。

 だから死の魔王ダルグスさんも驚いていたのかな。

 あたし達みたいなのがむしろずっと異端だから。


「発端は小学一年生の頃でさ、その時友達になってくれるって子達を連れて来たんだけど、その条件のせいで家にも案内出来なかった」

「その子達は彼方っちの事を信頼してなかったんだねぇ」

「だと思う。まぁそれでもコンが見えなかったっていうのはイマイチ理由がわからない訳だけど」

「コンちゃんも見えないってよくわかんないねー。家の方はまだダンジョン絡みかなーなんて思えるけど」

「うーん、その事なんだけどさぁ、ちょっとあーし思い付いちゃったんだよねぇ」


 お、澪奈パイセン、さすがっすー!

 ギャル風なのに賢い可愛いあたし達の星ぃ!


「ダンジョンがこの世界に現れ始めたのって大体七年前でしょお? それって彼方っちが小学二年生くらいの頃って訳じゃん?」

「だねー。――あ!」

「そう、それってばさぁ、軒下魔宮ってそれより前にあったって事だよね?」

「ああ、その通りだよ。実はずっと昔からあったらしい。じいちゃんの代にも」

「やっぱりねぇ。しかも多分それ、ダンジョンと関係あるんじゃない?」


 すごい澪奈パイセン、どんどん深堀りしていく。

 まだ決まったってワケじゃないけど、なんだかそれっぽい感じ。


「コンちゃんは多分、魔物の一種なんだと思うわ。それで軒下魔宮に住んでいて、彼方っちと知り合ったんしょ」

「キュ!」

「コンが正解だって」

「うん。だけどまだダンジョン自体は世に無かった。だから世間には見えなかった。つまりダンジョンと軒下魔宮は何かしらの関係性があるんじゃないかって思うワケ」


 まさかコンちゃんが魔物だったなんて。こんな可愛らしいのに不思議!

 今までダンジョンでもこんな子に会った事なんてないよー!


 モモパイセン、そろそろコンちゃん返してくれませんかね。


「そこは俺もなんとなく思ってた。ダンジョンに参加してみて共通点、というか通じる所があったからさ。参戦初日にそれにすぐ気付いて色々試してみたけど、間違いなく繋がりがあったって感じたよ」

「それが彼方っちの実力の秘密って訳ねぇ」

「そこんとこ説明ぷりーず!」

「……確かに仕様は幾つも違う。職業名も違うし、武器種も軒下魔宮の方がずっと少ないんだ。だから俺も使った事のない小斧に興味を持った。軒下魔宮に無いから試してみたいってね」

「ふむふむ。それで小斧を持っていた時は強くなかった訳ねー」

「けど斧を手放して無職となった途端、俺のステータスは拳術士と同等になった。それって多分、名前が変わっただけで同じ仕組みだからなんだと思う」

「けどレベルは共有していない。いわゆる別のコンテンツだから」

「うん、あくまでステータス値だけ引き継がれているんだ」


 そういう事かぁ。ダンジョン内じゃ彼方の無職レベルも低かったしね。

 あの時はみんなステータス値には興味なかったみたいだし。

 低レベルだと全値が5スタートで差が無いからなー。


「そこから察するに、多分軒下魔宮とダンジョンは設置者が同じなんじゃないかって思う。誰が置いたかはわからないけど、仕組みが共有している以上はそうとしか思えないんだ」

「となるとぉ、さしずめ軒下魔宮は〝アーリーアクセスダンジョン〟って事かねぇ」

「あーりーあくせす?」

「そそ、先行実装って意味。ゲーム関連でよく使われる用語なんだけどねぇ」


 澪奈パイセンほんと物知りだなぁ、もうあたしが口を挟む事もできないよ。

 ゲームにも詳しいって反則じゃない?


「いわゆるオンライン配信ゲームとかでよくあるんだけどさぁ、発売日前に未完成状態でちょっと提供しますよーってやつぅ。オープンベータ版とかって言われるのもそうだよね。場合によってはプレイヤーに色々試してもらって問題点とか集めて改善するってワケ」

「じゃあもしかしてダンジョンって、軒下魔宮で集めた情報から改善されたものって事なのか?」

「その可能性はあるよねぇ。ダンジョンに比べたら軒下魔宮って自由過ぎるもん。そこから制限を加えて難易度調整したって考えれば納得できるっしょ」

「たしかに……」


 なるほど、じゃあ軒下魔宮はいわゆる『原初のダンジョン』って事かぁ。

 でも世間に公開されてなかったから、コンちゃんは連れ出されても見えなかったって訳なんだね。


 じゃあ今連れ出したら皆にも見えるって事なのかな?


「まぁそこんとこは確証はないけどねぇ。仕様の一部が引き継がれてる以上、充分に可能性があるってだけで。彼方っちも理屈はわかんなくてもなんとなく気付いてたんだしぃ」

「ああ。だからみんなにはさっき得意職の武器を持たせてみたんだ。次にダンジョンで戦う時、多分だけどずっと有利に戦えるかもしれないからさ」

「おおー! じゃあ次回のステータス値がどうなってるのか楽しみ過ぎますなぁ!」

「そ、そうね、どんな事になってるか楽しみ……」


 あ、モモパイセンやっと調子が戻ったみたい。よかったー。

 やはりコンちゃんのモフモフは元気をくれるみたいだ。

 あたしも早くカワイズムを接種したいー!


「それなら彼方っちも武器持つ必要なくね?」

「いいや、俺は変身したいんだ。小斧を選んだ以上は持ち続ける」

「そこ、こだわるねぇ……」

「でもでも気持ちはわかるー! 防具チェンジの衣装ってさ、人によって違うらしいし!」

「本当か!? ならなおさらやる気が出てきたぞ……!」


 彼方、よほど変身したいんだね。

 でもまーわかる! あたしも憧れた事あるし!


 今回のレベルアップでの衣装チェンジに期待したい所ですなぁ。

 ステータス値アップで派手派手に変わってくれたらいいんだけどー。

 できる事なら魔法少女っぽい衣装を所望する!


「それにしてもぉ、軒下魔宮って攻略しても消えないんねぇ」

「ああ。まぁだから趣味にできるんだけどな」

「彼方ってもう色んな職業レベル高くなってそうだよねー。コンちゃんと協力すれば底上げも簡単そうだしー」

「底上げ? そんな事はしないよ。楽しめないから」

「……え?」


 ん、どういう事だろ?

 レベル上げ簡単にできそうだし、すごいお得そうな話なんだけどなー。


「だから言ったろ、『攻略が趣味だ』って。俺は別にレベルとかにこだわってないよ。ただ毎回『いかに速く、効率的に、ムダなく、徹底して』攻略する事を目指すんだ。だから攻略する時はいつもコンとレベルを合わせて強敵と戦ってる」

「おおう……それがあの超すごい指揮にも通じる訳かー」

「ガチで戦った時に超強いのも納得だわぁ~。根っからの戦闘マニアって事ねぇ」

「プロチームのコーチと外で戦っても勝てそうよ……」


 いやー想像以上に彼方ってすごかったわ。

 一体どう育ったらそうなるんでしょうか。

 子どもの頃に友達ができてたらこうもならなかったのかなー。


 まぁいいけどねー!

 それってつまりあたしがコンちゃんに続く二番目の友達って事だろうし!


 ……二番目、かぁ。


「それに、レベルはそこまで頼りにならないからな」

「「「え?」」」


 ――ええ!? それってどういう事?

 ダンジョン攻略ではレベルが超大事って言われてるくらいなのに。


 おやおやこれは……また彼方のスーパー理論が炸裂しそうですよぉ!?

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