第10話 これが戦略だっていうのか
コロシアム型と呼ばれる地形とゴブリンと呼ばれた魔物達の猛攻。
俺達はその攻防に一進一退を繰り返して応戦していた。
しかし幸い敵にヒーラーはいない。
おかげでようやくこっちの数と勢いが上回り始めてきたぞ!
「お願い助けて! こっちのヒーラーの
「頼む、高レベルヒーラー来てくれ! 大ケガをした仲間がいるんだっ!」
ただ一方でプレイヤー側からも悲鳴が聴こえて来る。
すでに何人かが入り口近くに倒れてうめき声を上げているし。
マナを使い切ったプレイヤーも少なくないようだ。
「つくし! 行ったげて! ここはもうあーしだけでやれるっしょ!」
「おっけー!」
そんな時、つくしがドタドタとケガ人達の下へ走っていく。
そうか、つくしも錫杖だからヒーラーなんだな!
バトルスタイル的に違うのかと思ってた! ここまで一回も魔法使ってないし!
「フフ、つくしのヒーラーレベルは26……今回参加のプレイヤーの中でも指折りの高レベルなのよ……レベルだけはね」
「最後の一言が引っ掛かるんだけど?」
「そう、回復魔法も他の子より効果が高い……効果だけはね」
「だから怖い、なんなのその含み方」
なんだ、つくしって普通のヒーラーじゃないのか?
もしかしてなにかしらのいわく付きだとか……。
「はいはーい、重傷の人ー回復しちゃうよー! 【
けどそう思った矢先、つくしの掲げた錫杖が強い輝きを放つ。
漏れた光がちょっと歪んでるけど、それでも眩すぎるくらいだ!
そんな輝きがケガ人へと降り、包み込んでいく。
すると遠目からでもわかるくらいに傷がみるみる塞がっていくぞ!?
やるなつくし、思っていた以上の効果じゃないか……!
「――けどその代わりデメリットがあるわ」
「えっ」
「傷を治された者はみんな……お腹をくだすの」
「ぐわああああ腹が、腹がいてぇぇぇ!」
「トイレどこォォォ!? いやあああああ!!!」
だがその直後、さらなる阿鼻叫喚が待っていた。
ついさっきまでぐったりしていたプレイヤー達が突然立ち上がって、尻をおさえて悶え叫び始めたんだけど?
ああ、つくし戦力外ってそういう事なの……わかっちゃったよ俺。
しかもみんなそのまま出口に向けて走っていってしまったし。
間に合えばいいな。うん。
死ぬより辛い思いしていない事を祈ろう。
「なんでつくしヒーラーやってるの?」
「えーっと、趣味かしら?」
「趣味で腹壊させられたらたまんねーわー」
「一回くらってみるといいわ……あれは、すごいわよ」
「絶対に嫌だね!」
そんな光景を見て、モモ先輩もなんかキュッとお尻を上げてしまっている。
ひきつった笑いを見るに、この人もくらった事があるクチなんだろうな。
「次の部屋の扉が開くぞーっ!」
「「ッ!?」」
な、なんだ、次の部屋の扉!? ううっ!?
奥の壁の一部が激音と共に持ち上がって、通路がでてきたぞ!?
もしかして、まだ戦いは続くのか……!?
「よし、第二から第五チームは僕達に続け! 他のチームは残党処理を! 行くぞっ!」
「お、おい本気かよ!?」
「早矢川君も来てくれ!」
「あーしはメンバーと残っし!」
どうやらその通りらしい。
しかも楠チームが有無を言わさず有力メンバーを引き連れて奥に行ってしまった。
俺の声なんてまるで聴こえていないようだ。
まだここにたくさんの魔物が残っているのに、どうして……!?
「彼方! 油断しないでぇ!」
「くっそぉ!」
主力がごっそり抜けたせいで魔物の勢いが息を吹き返してしまった。
しかも壁がいなくなって俺やモモ先輩、他の後衛を守る事ができなくなっている!
これじゃあもう初めてだからって悠長になんてしていられないぞ!?
「やらせるかこの野郎っ!」
「ギエッ!!」
まず迫ってきた一匹目の首を斧で叩き切ってやった。
思ったよりレベルが上がってるらしく、さっきより手ごたえがあるぞ!
さらにその身体を蹴り飛ばし、後から来る奴らにぶつけてやる。
おかしい、さっきと違って爆散までいかなかった。
後続が押し倒されたから結果オーライだけども。
「おぅあああ!!!!! ふんぎゃあああ!!!!!」
そこにすかさずつくしがやってきて倒れた奴らを容赦なくメッタ打ちだ。
近くで見ると割とスプラッターな事してるな、この子!?
絶対にヒーラーじゃないだろ!? 錫杖の先がもう鋭角に曲がってるけど!?
「奥の通路を塞ごう!」
「先発隊の所に行かせるな!」
「おいおい、本気なのかよ!? やつら呼び戻して全員で一緒に戦った方がいいだろどう考えても!」
しかしこの状況を作り出した先発隊は何を考えているんだ!?
一旦殲滅して落ち着いてから突っ込んでもいいじゃないか!
こんな無茶に晒されてしまったら最悪、全滅だって有り得てしまうんだぞ!?
こんなのはもはや……戦略でも戦術でも、ない!
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