第3話 危険な場所に挑む彼女達
同じクラスの虹岡つくしさんに連れてこられたのはダンジョン部とかいう部活。
一体どんな事をする部かもわからなくて、俺はもう唖然とするしかなかった。
するとギャル先輩が手招きして、手前のソファーへ座るよう誘ってくる。
どうやらこの人は虹岡さんと違って、ある程度マナーとかは心得ているらしい。
なのでここは彼女の誘いに乗り、ソファーへと腰をかける。
そうしたらなぜか虹岡さんまで俺の隣に。
肩が当たってとても近い……!
「えっとねぇ、ダンジョンっていうのは~七年くらい前かなぁ、いきなり世界中に現れるようになった謎の遺跡みたいなモンなんよね~」
「へぇ……」
「んでもダンジョンってばさ、現れるばかりで勝手に消えないからドンドン増えて困っちゃうワケぇ」
「なら土建屋とか自衛隊で解体処理すればいいんじゃ……」
「それなー。そうできるならいいんだけどねぇ、そうもいかないんよぉ~」
「えっ……?」
そんな虹岡さんのぬくもりに心躍らせていた訳だけど、ギャル先輩の話が思ったより真面目でつい引き込まれてしまった。
ギャル先輩がその話の最中、デコスマホを「ピッ」と俺に向けてくる。
見た目に反してちょっと怖そうな雰囲気を醸しながら。
「ダンジョンってねぇ、銃や爆弾も効かなくて外からじゃ壊せないんよぉ。おまけに中にも持ち込めないしぃ。それにさぁ~なぜかオトナ――ハタチくらいになると入れなくなっちゃうんよねぇ~」
「でも中にダンジョンコアっていうのがあって、これを壊せれば消えるのー!」
「ククク、まさに魔術の所業よ……!」
「なのでぇ、あーしらみたいな学生がダンジョン攻略に行く必要あんだよねぇ~」
「な、なるほど……」
子どもしか入れない?
なのにダンジョンコアってのを壊さないといけない?
なんてはた迷惑なシステムなのだろうか。
ダンジョンそのものが理不尽なのに、制限まであるなんて。
「ま、その代わり日本政府から推進のための補助金とか攻略報酬とかも出るしぃ? 手厚いサポートも受けられるん~。ウチの部はその辺りしっかりと提携してるから心配しなくていーよぉ~」
「はぁ、そうっすか」
「とはいえねぇ、参加するにはどうしても最低四人のチームを組まなきゃいけなくてさぁ……だからどうしても新入生からもう一人くらい欲しいなーって思ってたん。ほら、二年三年はもう部活決まってるだろうしぃ?」
「そこまでサポートされてるなら他所からの人と組めばいいんじゃ?」
「そうもいかない事情があるんよぉ~」
「そ、そうなんだ……」
どうやら他にも色々と都合があるらしい。
だから虹岡さんは俺を強引にここまで連れて来たのか。
けど、そういう事なら協力するのもやぶさかじゃないかな。
どうせ俺にはこれといって入りたい部活があるという訳でも無いし。
たとえ入るとしても友達作りのためで、活動自体にこだわりは無いから。
だったら穴埋めのための勧誘でも構わないとさえ思う。
俺が助けになるのなら、それだけで。
「あぁ~でもぉ、ただの穴埋めで入るとかいうのはパスでよろー」
「えっ……?」
「ぶっちゃけさぁ、ダンジョン攻略って超ヤバいんよ」
「あの地は混沌……常に死と隣り合せ、ウフフフ……!」
「中にはさぁ、『魔物』って呼称された激ヤバ生物がいてねぇ~。あ、これダンジョンと同じで小説物語から取った名称ね。んでそいつらはぁ、あーしら人間に容赦なく襲い掛かって来るってワケぇ。だから油断すると……死ぬ事になる」
――軽く思っていた矢先、ずっと話が重くなってきたぞ?
つまりこのダンジョン部は危険な場所に自ら赴くヤバい団体という訳だ。
学生なのになかなかブッ飛んでいると思う。
そもそも日本政府はそんな死ぬかもしれない場所へと子どもを斡旋しているのか?
大人が入れないからとはいえ、それって倫理的にどうなんだ!? おかしいだろ!?
「その代わりぃ報酬は一戦・一人頭で大体、リーマンの月収と同等かそれ以上。死と隣り合わせの報酬だけどなかなかに高額ってワケぇ。別の国じゃ強制徴兵されるトコもあるみたいだしぃ、比べれば自由でずっといい仕組みだよねぇ~」
「みんな危険だってわかってるから、進んでやる人なかなかいないけどねー!」
「そゆことぉ。そういう場所で背中を預けなきゃなんない人がヤル気無いとかマジ不安でしょーがねーってさぁ!」
「……なるほど、事情は大体わかりました」
――だが、だからといって尻込みはしていない。
それは彼女達が「ヤバい」と宣う場所に自ら居座っているからこそ。
きっと彼女達にはそれでも部にいたい何かしらの理由があるんだろう。
そんな彼女達の力になりたいと思うのは嘘じゃないから。
少なくとも、俺の手を一心に握ってくれた虹岡さんには何かお礼もしたいし。
「……なんか彼方っち、思ったより動揺してなくね?」
「事情がわかってスッキリしたからですかね」
「そっかぁ~。ま、じゃあそういう訳でぇ、来てくれただけでも嬉し――」
「参加しますよ。それでも」
「「「ええっ!?」」」
それに挑戦する事自体は嫌いじゃない。
ならこんな話を聞かされれば、やってみたいとも思うじゃないか……!
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