魔王国
第11話 宣戦布告
最後の試練の目的である最上級魔法を行使することができたからだ。
対象がいないと発動もできないという魔法だったため、強力な魔獣のいるところまでかなり遠出をした。朝食は済ませてきたが、何時間も経ってしまい、もう昼だ。
「師匠、昼食を食べさせてください」
「準備しておいたわよ」
師匠の元へと、戻ると美味しそうな料理が並んでいた。よだれが垂れてきそうだ。
「「いただきます」」
ふわふわのパン、スープ、魚、さらに美味しそうな鳥の丸焼きまである。野菜の緑やトマトの赤色など、盛り付けも豪華できれいだ。これは、美味しくないわけがない。
「まずは、魚から」
「あら、じゃあ私も」
俺が魚に、箸を向けると師匠は魚にフォークを向けた。この箸は、俺が自分で作ったものだ。やはり、ナイフやフォークは日本人の俺には合わないらしく結局は箸を作ることにした。
「師匠、あんまり取らないでくださいよ」
「大丈夫よ、こんなに大きい魚なんだし」
そう言いながら、楽しく昼食の時間を過ごした。
そして、帰りの準備をしていたときのことだった。
「あれは――」
師匠は指を指して、ある方向を眺め呟いた。その先には、複数の煙が見えた。中には、赤色の煙も立っていた。
「戦争ですか?まさか、ポーラ帝国が魔王国に?」
「ええ、そのようね。あの赤い
噂は聞いていた。魔王という存在が現れた魔王国は他国に侵略戦争を仕掛けるものだ、と。前回の魔王復活から、時間があまり経っていないこともあり多くの国はその危機感を強く持っていた。特に、魔王国と何度も戦ったことのあるポーラ帝国と聖王国はその危機感が段違いだった。
だが、今回の魔王は仕掛けてくる気配はない。
あくまで、防衛戦略を重視していると思っていたから、ポーラ帝国側から仕掛けるとは思わなかった。
「まさか、戦争が始まるなんて」
「起きなかったほうが、おかしな話よ。魔王が、仕掛けなかったことが異常なんだから。何かを考えているって思うほうが自然な流れじゃないかしら」
「そう言われると、今まで、侵攻していた国が慎重になったと考えると何かを企んでいると考えるほうが自然ですね」
「そういうことよ、彼らはやられる前に仕掛けた、それだけよ」
ポーラ帝国が仕掛けたということは、聖王国も同じく仕掛けているのだろう。師匠は、どうするんだろうか。聖王国に恨みがあるなら魔王国に付くのか?
それとも、人類の敵である魔王国と敵対することを選ぶのか。
「師匠、どうするんですか?」
「ポーラ帝国軍を助けに行くわ」
「了解です、師匠」
俺と師匠は、煙が立つ方へと駆けた。
――大陸暦439年 7月4日 の今日この出来事は後世にこう伝わることとなる。
"崩壊の始まり"
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