第6話 死の兵士《デス・マン》
「ウワアアァァ!!」
大きな怒号を鳴らしながら、高速で向かってくるのは上級魔獣ゲオルグベアー。
硬い体毛に覆われた数m級の巨大な身体は、まるで岩石のようだ。それが、車のようにまっすぐ突っ込んでくる。あぁ、思い出すな。
ふと、前世で轢かれた暴走トラックを思い出す。鈍い音がなり、全身が砕けるのを感じた一瞬。今でも、思い出す。
でも――あれに比べたら幾分かマシだ。今の俺には、師匠に教えてもらった魔法がある。
「
俺の魔法である
今の
鎖は環状の部品が連なったもののことを言うが、
でも、今の
それを宙で散らし、ゲオルグベアーの正面に配置した。
「
何十に分かれた剣は、軍隊のように徒党を組みながらゲオルグベアーの正面に向かっていった。俺が念じて動かしているのだから、表現は違うかもしれない。それでも、何十の剣がゲオルグベアーに向かっていくのを見ると動かしている実感は湧いてこない。
「出し惜しみはなしだ」
俺は、
そして、師匠がくれた
「ゴクッ」
喉に針が刺さったような痛みが、走ったがそれも束の間。身体から、溢れんばかりの魔力が噴水のように湧き出てきた。
――"
身体の奥底からなぜか、浮かび上がる言葉。師匠の言った通りだったな、この感覚は核に刻まれている魔法を読むときと同じ感覚。
師匠は、俺がはじめて魔法を使った日から午前は魔法の訓練を午後は座学を教えてくれいた。その中で、一番初めに教えられたこと。
『あなたは、魔法の才能が溢れてる。でも、それは簡単に行使できるようになるような魔法ではないの。あなたの魔法は特殊なものが多いわ、きっとあなた自身の魔力の器が溢れたときに魔法を読み解くことができるはずよ。私も魔法を一気に認識して行使できるようなったことがあったのだけど、それは魔力が自分の器から溢れたときだった』
――『だから、もし死にそうなとき、大事な人を守りたいとき自分の力不足を感じたらこの魔石を飲みなさい。この魔石には、高濃度の魔力が詰まってるわ。きっと、あなたの器を溢れさせてくれるはず』
どんな魔法なのか詳しいことは、分からない。でも、使うしかない。
「今が、大事な人を守りたいときで力不足をかんじたときで死にそうなときだから!来い、
「召喚感謝する、新たな主、我が同胞」
黒い霧が発生したかと思うと、すぐにそれは晴れ、そこから出てくるのは
破れた黒いローブを着ているその
「応えてくれてありがとう、俺も良く分からないけど主って言ってくれるんだったらあの熊を倒してくれないか?詳しいことは、そのあとに話したい」
「かしこまりました」
そう言うと、
「
それも、中級に値する
巨大な氷の槍が、
もちろん、俺が召喚した
「ウウ..ウゥ」
唸っているが、その目は死んでおらずなおも向かってきている。
「嘘だろ、致命傷のはずなのに....」
「突然変異のゲオルグベアーと分析する。主、全力を持ってゲオルグベアーの絶命を行います。主にお力添えをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「問題ない、全力で行くぞ。俺の
「
「
しばらく経つと、ゲオルグベアーの生命活動が停止したのを感じ取った。
「終わった...勝てた」
「ゲオルグベアーの絶命を確認、主、私はどうすればよろしいでしょうか」
「あ、あぁ悪い。多分、また召喚するよ。だから、今日はここで」
「お待ちください!」
師匠の元へと向かうため、魔力の消費が激しい
「主の魔力や時間がないのは、承知で申し上げます。私と正式に契約していただけませんか?」
――契約は、基本的に悪魔や天使と結ぶ魂の契りだ。
有名なものは、悪魔と金を犠牲にして力を得た。天使と命を犠牲にして天国へ行った。とかよくあるようなものが契約だ。
一応、少数ながら魔物だったりと契約することはあるらしいけど。
師匠には、契約するべきではないと言われている。だからこそ、したくはない。俺は、馬鹿じゃないんだぞ。
「私は、
約の内容は、俺が
師匠からも教えてもらったことがある、
――きっと、このトールマンはそのうちの一人だろう。
「私の名を呼び、私の核と契約を結んでください。そうすれば、私は"今度こそ"主と認めた方を守ることが出来る」
俺は、ただの高校生だ。危険なことは分かっている。でも、これからのことを考えた時にトールマンほどの存在が、いればどれだけ助かるだろうか。男は、ハイリスクハイリターンを取りたくなるのだ。
師匠をこれからも守っていくためにも、俺は力が欲しい。
「トールマン、これからもよろしく頼む。俺を、そして師匠を守る仲間として――」
トールマンの誠意溢れる決意を見た俺は、彼を信じることにした。だから、彼の核と魂の契約を結んだ。
そして、俺は魔力の使い過ぎによって眠気が限界に到達しその場で倒れるように眠った。
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