拝啓、親愛なる霊体殿~変人より愛をこめて~

みほし ゆうせい

【序章】 初めての心霊体験~あれは14歳の夏、畑で~

 言い訳させてください。ほんとにね、かっこいい小説とか書きたいんです。

 でも、本職とかで神経がゴリッゴリに削れちまって。結局全部中途半端。もうそんなの嫌だ!書き続けてぇ!ちなみに本職は、フリーランスのライターです。作家になりてぇ。エッセイで食っていきてぇ。煩悩しかない。


 とりあえず、自己紹介しますね。

 みほしです。性別も、もれなくみほしです。そういうタイプの人間です。よろしくお願いいたします。


 もともとあっちの人たちが見えてたわけではありません。見えてたかもしれんけど、見えすぎて普通の人認識してたのか、目が悪くてスルーしてきてたんだと思います。


 逃げられないくらい見え始めたのが、14歳のころ。梅雨でした。

 地元はバシバシの観光地で、容赦なくどっからでも温泉がわく場所なので、梅雨の蒸し暑さときたら半端じゃないです。

 その日、部活が終わったのが18時半とかだったかな。いつも一緒に帰ってた人が、その日に限っていなかったんです。でもボッチ慣れてるんで、普通に田んぼ道を突っ切って歩いてました。

 田んぼと田んぼの間に、なぜか畑が無理やり作ってあるところがあって、そこに差し掛かったときにヴァっと風が吹いたんです。ドラマチックでしょ?(強引)


 湿度100%の風を浴びて不快に思いながら畑を見ると、いました。スケスケのばあさんです。私の心霊初体験は、ばあさんでした。白いタイプのスケスケばあさん、畑仕事真っ最中の格好で立ってました。


―やけに白いばあちゃんやな。


 このとき、まだ霊なんて信じてなかったんです。だって14歳なんだもん☆目も悪いし、実体だと思ったんですね。白以外の色なんて帯びてなかったのに。あのときの私、どうかしてた。

 で、ばあさん。こちらを見て横を向いたかと思うと、ありえんくらいの大股でホイッホイッと歩き始めたんです。そのときはじめて、このばあさんがただものじゃないのに気づきました。


―股関節柔らかすぎんか。


 中二のころの私、ばあさんの異様さを目の当たりにしても、まだ実体だと思ってたんですね。哀れですね。ばあさんはもう霊魂なのです。

 三段跳びのピョーンの部分を3倍くらいスローにしたような歩き方をして、ばあさんはスッときれいに消えました。

 こうなってようやく「見てしまった」という自覚を持ったのを覚えています。


 ここから怒涛の勢いで霊を見続けることになります。帰り道、生首2つに落ち武者複数、どう見ても生きてない女の人とすれ違いました。このときばかりは怖かったのを覚えています。


 はよおうちに帰ろう。おうちにさえ帰れば、絶対安全なんやと信じてました。

急ぎ足で帰宅して、玄関にバッと駆け込みます。

「た、ただいま」

 玄関にいたのは、これもどう見ても霊体の女性でした。

『おかえり』

 彼女はにんまり微笑んで出迎えてくれました。


「あんたに言ってねぇよ。ふざけんな。てか話しかけてくんなよ。私の家や。お邪魔しますっていうのが筋やろが」


 すべて弾けた瞬間です。弾けるまでの時間、ほんと短すぎ。我ながらびっくりです。


 母から聞いた話によると、我が家は戦場後であり、なおかつ田んぼとお墓をつぶして作った家だとか。外の何倍もお亡くなりになった人が、家の中で当たり前のように生活していました。こんな中で生活してたのかと、なぜかスンってなりました。



 これが私の霊が見えるきっかけになった実体験です。ここから愛すべき霊体たちを見まくりの生活が展開されて、全部すっ飛ばして今に至ります。怖い思いをしたのは、ほんの数回。そのほかはこんな感じのハートフルストーリーなので、怖いのが苦手な人でも安心して読んでくださいね!!


 再三言います。

 頭を空っぽにして読むエッセイです。

 よろしくお願いします。

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