第471話 沈黙 🦓
自己に向き合う姿勢、結果としての沈黙、それこそが詩を育てる。後進育成に力を注ぎ、病床から大阪弁のジョークを飛ばしつつ「自由な思いを定型に託しなさい」と説いた山上樹実雄さんの痕跡をほとんど存じ上げなかったヨウコさん、詳らかな評論を拝読して、またひとつの大きな明るい目標を提示していただいた思いのようです。
初学の高校時代に早くも「揺れやすきところより花咲きそめし」と詠んだそうですから驚くべき早熟ぶりですが、人間関係や経済面など世俗の労苦を重ねて医師になり「万緑のどこに置きてもさびしき手」「少年の老いたるわれか桃の花」「世の人のしんがりにゐて水を打つ」「花の夜の枕に沈む首かな」など静謐な艶を収められました。
有名な賞の選考会で大方の委員の高評価を得ながら、一部に生活感の稀薄さを云々する声もあったそうですが、それはちょっとちがうのではないかと僭越ながらヨウコさんは思います。往時の女性俳人の代名詞とされた台所俳句を引き合いに出すまでもなく、厨事や飲食を句に詠まなければならない必然性がどこにあるのでしょうか。
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※すぐ前の席では、長い髪を背中に散らした若い女性が単行本を熱心に読書中。その前の席には初老の柔道師範。つい先日まで自分の名を大書したTシャツ姿でしたが、さすがに今朝は黒いブルゾンを羽織り、いかつい身体で備え付けの紙誌を取り替えに立ったり座ったりして気忙しいのです。にわかに秋が深まった感じの朝カフェにて。
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