第283話 ラジオ深夜便のはなし 📻



 なんとまあ無惨にしゅうあくな一団なの。子どもたちに申し開きができないわ~。多額の税金の集団かすめ取り事件が発覚したのに、即刻それを返すでもなく、ましてすべての国民が公平に負うべき追加徴税をおさめるでもなく、しれっとした顔で身内だけの順位入れ替えでお茶を濁そうとする。ねえ、本当にこれでいいと思ってるの?


 心底から呆れかえっている同じ日に、若い友人一家が黙ってひっそりと家族の生涯をかける社会貢献の大きな決断を行ったことを知り、人間としての資質のあまりの差に気持ちがゆすぶられ眠れません。諦めて枕元のラジオをつけると「こんばんは~。朝の番組から深夜に移動して最初の夜です」おだやかな男声が聴こえて来ました。



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 うわあ、それは大変だ~。たったひとりで未明まで五時間の長丁場の生放送です。どれほど緊張して今夜に臨まれたかとご拝察すると、肌がひりひりするようで……。早くからスタンバイされていたというゲストの高橋秀樹さんも『深夜便』デビューのアナウンサーを支えようとなさっている感じが電波を通してよく伝わって来ます。


 石原裕次郎さんと身長は同じなのに脚の長さがちがうのでいつもズボンを詰めなければならなかった(笑)という自虐ネタを起点にして、そのコンプレックスが幸いして着物すがたの時代劇役者が誕生したという着地の話芸に心地よく聴き惚れながら、さあて明日は明日の風が吹くかしら、人として健やかな心だけは保ちたいな~と。




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