第271話 言わずもがなを言わずにいられないひと 🏫



 畏敬する社会活動家の自伝に「むかしからいたんだね~、こういうひと」思わず呟きたくなるような苦い逸話が紹介されていました。薄情な身内からの自立を目指して勉強に励んだ女学校四年生の三学期、担任から呼び出されて職員室へ行くと、今年度の成績優秀者として☆◇賞の賞状&副賞の硯箱の授与を申し渡されたそうです。


 その栄誉は病気休学中の優等生が受けるべきものと途惑う生徒に、不快な表情を隠そうともしない教師は「まあねえ、いろいろ議論もあったのですが、職員会議で決まったことですから、さあ、お受けなさい」褒めているのか貶しているのか分からない切り口上をまくしたてたので、仕方なく授与された心は卑屈な色に染められた……。



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「なんて愚かなんでしょう 私見を生徒にぶつけるなんて!!」そっちの方角へ(笑)憤るヨウコさんにも似たような記憶があります。ある小さな文学賞の立食パーティでワイングラスを片手に近づいて来た高齢男性審査員から悪魔の言葉を囁かれたのです「じつのところ選考会は揉めてね~。むろん、わたしはきみを推したんだがね」(';')


 高揚していた気持ちが一気に冷めて、自分がピエロのように思われて来ました。「あの作家はこう評し、この評論家はこう言ったんだがね、委員長のわたしがまあまあと収めたんだよ」酒くさい息を吹きかけて立ち去る背中の余韻が汚らわしく思われてならなかったヨウコさん、以降、その作家の本をマイ禁書指定(笑)としました。




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