第130話 やだ、奥さん、へんなとき来るから 🗿



 上空に寒気が居座っているという寒~い午後、ひとり用こたつで録画ドラマを観ていたらピンポ~ン、え、だれ? 困るわ~こんなときに……狼狽したのは、しっかり嗚咽して顔中びしゃびしゃだったから。仕方なく玄関に行くと、近所の女性でした。


 せっかく両手にいっぱいの野菜やお菓子を届けてくださったのに、慌ててマスクをつけたヨウコさん「やだ、奥さん、へんなとき来るから」失礼なことを言いました。


「どうしたの?」「ドラマを観ていたら泣けて泣けて」「まあまあ、で、どんな?」「ほら、鈴木亮平さんの……」「ああ、なんか窮地らしいわね」「そうなの。でね、自分がいろいろあったときの人情の裏表が思い出されて、ついついね💧💧💧💧」



      🌁



「大丈夫? なんかあったらいつでも言ってね」手を振って去って行く女性には告げなかったのですが、本当はもうひとつの痛切なひとこまもよみがえっていたのです。


 あるとき、仕出かしてしまった某公立美術館の幹部を庇ったら「あんたの価値観はおかしい!!」激怒した館長(有名画家の息子)に館長室で土下座を命じられました。


 いつだれがどんなことをしても不思議はないのが人間だと思っているヨウコさんの考え方は間違っている……若い学芸員さんたちの前で、さんざん糾弾されたのです。




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