32 ルコント国王視点 ざまぁ 

(ルコント国王視点)



 地下牢に数日間閉じ込められ、まともな食事も出してくれない。ベッドはカビだらけだし、床は常にぬめっていて嫌な匂いが充満していた。


「これは人道的にどうなんだ? たとえ重罪人でもルコント王国では、まともな食事ぐらいはさせてやるのに」


「笑わせるなよ。皇太子妃殿下を拉致するような極悪人は、食べる物がもらえるだけで感謝しろよ」

 カチカチになった古いパンと水のように薄いスープだけではお腹がすいて目が回る。


「こらぁーー! 儂を餓死させるつもりなんだな? なんて酷い国なんだ」

「いや、お前にとっては健康に良さそうだけどな。だってどう見ても太りすぎだぞ」


 看守の一人が儂の突き出た腹を指さして笑った。


 ぐぬぬ、許せん。儂をバカにするとは。


 儂は空腹でめまいを覚えながらも、この牢を抜け出す為に身体を鍛えた。とにかく隙を見て脱走してやる。それには体力が必要だ。


「こいつ、きもいな。こんなとこで腹筋してるぞ」

「うーん。まぁ、いいんじゃないか。きっと役立つ」


 看守達よ、今に見ておれ! 儂は必ずここから脱走してやる! 



❁.。.:*:.。.✽.


 

 裁判の結果で儂は終身刑を言い渡された。きっと寒い僻地の塔のような場所に幽閉されるのだろう。そうして死ぬまで退屈な、面白いことなどひとつもない生活をおくるのだ。


「なんてことだ。儂は閉所恐怖症なのだぞ」

「ふーーん、閉じ込められるのが嫌なのかい?」

「あぁ、そうとも。狭い部屋に幽閉されたらきっとすぐに頭がおかしくなる」


 看守達は「だったらそんな心配はいらない」と言いながら大笑いをした。儂は目隠しをされ、やたらに揺れる旅に連れ出される。

 やっと目隠しをとられた時の儂は海の上にいた。数日かけて孤島にたどり着き、儂は乱暴に船からおろされた。こんな孤島の収容所じゃぁ逃げることもできない。


「くっそ! こんな蒸し暑い孤島で生涯暮らすのか? 最悪だ。で、どこにあるんだ? 収容所は?」


 儂が訊ねても、男達はさっさと船に乗り込み島を離れていく。


「はぁーー? ちょっと待て! 収容所は? 儂はどこに行けばいい?」


 叫びながら海に入り船を追おうとすると、さきほどまでは気づかなかったワニが一斉に襲ってきたのだった。


 ひゃぁーー!!

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