たがための標本

ロイドはいつもぼんやりして見える。

交友関係は狭く、引きこもりがちで、趣味らしい趣味もございません。

それなのに、部屋には美しい虫の標本をためこんでいる。

その収集癖は辞書的な性癖であって、虫が好きかと言われると、それも答えあぐねる。

ただ、一人で部屋にいると、頭は生きてる意味とか、そっちに行って、

そうすると美しいはずの標本はただの死骸に見えて、大きな蛾の翅は、

死を促す催眠術師の目のように見えてくる。

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