第8話 覆われた空

 髪を乾かし夜になると、二人はスマホを触りながらテレビでアニメを見る。


 何だかんだ恋愛物が好きな私達。

二人はそのアニメを見ながらドキドキを味わっていた。


いつも一人で部屋にいた私。

何をするわけでもないが、こうして部屋に誰かがいてくれるだけで、安心した気持ちになれる。


そして寝る時間になり、私と美華は一緒の布団に入った。


 美華「ねーねー...」

彼女は甘えたように私の方を見ながら言ってくる。

何を言うか分かっていた私だったが、あえて訪ねてみた。


 唯愛「んー?美華どおしたの?」


 美華「お昼の約束...してもいいかなぁ...」


私は、このおねだりをする彼女が本当に見たくてしょうがなかった。


そして私は答える。

 唯愛「うん!いいよー!はいっおいで!」


彼女を抱きしめた。


私の胸にうずくまる彼女が本当に愛おしい。

愛ってこういう事を言うのかと思うくらいに。


彼女は私に包まれながら、"おやすみ"と一言いい、そのまますぐ眠りについた。


好きな人に抱きしめられる感覚は私も知っている。

全てどうでもよくなるくらい、頭の中が急にゆっくりと流れ始めるのだ。

そして全身が、程よい麻痺にあったような感覚。



過去の私のように...


そして...


私の胸の中で眠る美華のように...


私もいつかそんな日がまたくればいいなと思いながら、眠りについた。



 そして次の日の朝。


私は外の鳥の鳴き声で目が覚めた。


初めは頭が回転せず気づかなかったが、私も彼女も眠りについた時のまま。

体制を変えずにずっと寝ていたことに気づいた。


昨日は何かと色々あったから疲れていたのだろう。

そして柔らかく暖かい彼女を抱き枕としていた私。

最高の寝心地だった。


少しして彼女も目を覚ます。


 美華「唯愛〜おはよ~!」


そお言って彼女はさらに私を抱きしめてきた。


 唯愛「美華おはよ〜!」

彼女の寝癖のついた髪を整えながら頭を撫でる私。


 しばらく甘えていた彼女も、目が覚めきったか、急に切り替え起き上がった。


 美華「よおし!満たされました!ありがと唯愛!それではランニングにでもいきましょうか!」

いつもの彼女に戻る。


そう。

ここからは私が頑張る番だ。


 唯愛「うん!いこっ!」

そして私達は準備をし、走りにいった。


まずは公園の周りを20分ほど走り、一旦休憩。もしまだ体力があれば、もう一回同じように走る。


 1回目を走り終えた後、私はかなりの息を切らしていた。いつもより気合いが入ったのか、ペースが早かった。


 美華「大丈夫?唯愛」


 唯愛「はぁ...はぁ..。ちょっとキツイかも...」

思えば美華は、昔から運動神経がバツグンによかった事に気づいた私。


毎日ランニングをし、少し自信を持っていたが、彼女の体力の凄さに落ち込んでしまう私がいた。


 美華「休憩して、もしまた走れそうなら走ろっ!無理なら無理で大丈夫だし。自分のペースでやっていけばいいよっ!」


 唯愛「やっぱり美華は凄いや。私、少し自信ついてたのに...」


 美華「自信失う事ないよ〜!前とは比べ物にならないぐらい、唯愛体力ついてるじゃん!それに走り方も、かなりサマになっててカッコよかったよ!」

こういう時の彼女の言葉は本当に助かる。


そう。

人と比べてはいけない。


少しずつだが成長してるんだと実感させてくれた。


 そして、自販機で飲み物を買い、いつものベンチに向かった私達。


 すると...


そこにはなんといるはずのない彼が座っていた。

 

 曇に覆われた空。


この時も彼に光は差し込んでいなかった。

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