第19話:圧力と不本意

 お姉さんたちのファンは、色んな意味でとても力が強かった。

 ファンたちが行う度重なるサーバー攻撃に、日本政府だけでなく表に出ていなかった抵抗勢力も膝を屈した。


 お姉さんたちのファンは、表に出て反対していたバカだけでなく、陰で政治家を動かしていた連中を見つけ出し、彼らが重ねていた犯罪を公表した。


 政治家は不逮捕特権を使って逃げ切ろうとしたが、新たな入札でテレビ放映権を手に入れた、まだ初々しいテレビ局の激しい追及に負けて国会議員を辞職した。

 辞職したら不逮捕特権がないので、警察に連行され厳しい取り調べを受ける。


 陰に隠れて政治家を動かしていた卑怯者は、とうぜん政治家よりも前に逮捕され、激しい取り調べを受けていた。


 彼らがいなくなった事で、お姉さんたちの昇級をじゃまする者はいなくなった。

 国際ダンジョン協会の圧力もあり、日本ダンジョン協会はお姉さんたちを直ぐに昇級させた。


 深雪お姉さんと月奈お姉さんはB級冒険者に昇級した。

 桜、葵、ルナの小学生3人組はD級冒険者に昇級した。


 僕は晴れてC級冒険者に昇級する事ができた!

 これでお父さんお母さんと一緒にダンジョンに潜れる。


 世界を渡り歩くトレジャーハンターになれる!

 世界一のトレジャーハンターに一歩近づいた!


「竜也、お父さんから連絡だよ」


 おばあちゃんの言葉に、僕が急いでドローンの映像通信を開くと、お父さんとお母さんが映っていた。


「C級昇級おめでとう、よくやったぞ」

「本当に良くやったね、竜也」


「ありがとう、お父さんと、お母さん、これで僕も一緒に潜れるね」


「それなんだけれどな、せっかくパーティーを組んだのだから、もう少しがんばれ」

「そうよ、竜也、男の子なのだから、女の子と仲良くなるのは大事よ」


「いやだよ、女の子なんかにきょうみないよ!

 それよりもお父さんお母さんと一緒にダンジョンに潜りたいよ」


「お父さんも竜也と一緒にダンジョンに潜りたいのだけど、直ぐには無理なんだ」

「そうなのよ、今潜っているダンジョンがS級専用なのよ」


「そんな、僕がC級になったら一緒に潜るって言っていたじゃないか!」


「ああ、約束通り、C級になったから一緒に潜るぞ」

「お母さんも約束通り一緒に潜るわよ」


「だったら何でだよ」


 分かっている、本当は分かっているんだ。

 こんな子供っぽい事を言いたい訳じゃない。

 でも、分かっているのに、ガマンできずに口にしてしまった。


「今は誰も潜った事のない深さまで潜っているんだが、追いかけて来る奴らがいる」

「そうなのよ、今ここを出てしまったら、ライバルに負けちゃうのよ」


「うん、本当は分かっている、お父さんお母さんが負けるのは嫌だ。

 タカラブネファミリーが他のファミリーに負けるのは見たくない。

 お父さんとお母さんが勝ってから一緒に潜るよ」


「よく言った、それでこそ俺の息子だ」

「えらいわ、お母さんは竜也を誇りに思うわ」


「うん、お父さんとお母さんの子供として恥ずかしくないトレジャーハンターになるから、ケガをしないようにしてね」


「ああ、まかせろ、傷1つ負わずに勝つぞ」

「お母さんもかすり傷1つ負わずに帰るわね」


「うん、約束だよ」


「竜也、帰るまでの宿題を出すが、やれるか?」


「うん、お父さんが出してくれる宿題なら喜んでやるよ」


「そうか、だったら2つ出すから、そのうちの1つをやれれば合格だ」


「2つのうち1つでいいの?

 2つともでもやってみせるよ!」


「1つはプライベートダンジョン以外で地下51階まで行く事。

 これは竜也が1人でもできる事だから、がんばりなさい」


「はい!」


「もう1つは、パーティーメンバー全員をC級以上にする事。

 これは自分の努力だけではできない事だし、無理をしたらパーティーが崩壊する。

 だから絶対にやれとは言えないし、メンバー運がないと絶対にできない事だ」


「分かった、できる範囲でがんばるよ」


「分かっているだろうが、パーティーが解散するような事をしたら、1つめの宿題ができていても不合格にするからな!」


「だいじょうぶ、パーティーメンバーに無理はさせないよ。

 命の危険にならない程度に、彼女達のためにもなりやり方でがんばるよ」


「絶対に無理をするなよ」

「女の子には優しくしてあげなさい」


「うん、分かっているよ」


★★★★★★


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