第5話:二度手間、三度手間

 右手に持っていた大刀に加えて、左手で脇差を抜く。

 冒険者の多くは刃渡りが60cmで重さが2kgの大刀を使う者が多い。


 だけど僕はまだ12歳だから、あまり重い武器は使えない。

 だからひいおじいちゃんが改良してくれた魔剣を使っている。


 脇差も同じ魔剣で、大刀より少し刃渡りが短い50cmで重さを感じない。

 大刀と脇差の違いは、大刀がモンスターを斬る魔術が付与されていて、脇差がモンスターを引き寄せる魔術が付与されてい事。


「こっちにこい、お前の相手は僕だ!」


 水竜タイプの亜竜が僕を襲ってくる。

 僕の身体ではなく左手に持っている脇差を食べようとする。

 だから左手を前に出しながら少しずつ後ろに下がる。


 一度、二度、三度、わざと水亜竜に攻撃させる。

 お姉さんたちから十分離れたから、もう安全だと思う。

 時間的にも十分で、宝物が地下2階に運ばれたはずだ。


 三度の攻撃をよける間に、水亜竜の攻撃パターンは見抜いた。

 いつも倒しているプライベートダンジョンに出てくる水亜竜と同じ。

 四度目に脇差を食べようとするのを利用して、水亜竜の急所を突く!


「すごい、まぐれじゃなく、実力で亜竜を倒しちゃうんだ!」


 お姉さんが何か言っているけれど、相手にしている時間はない。

 一度開けて場所が知られてしまった隠し扉を急いで確認していく。


 トレジャーハンターなら、命の恩人に宝物をゆずるのがマナーだ。

 だけど、冒険者の多くはマナーが悪いと教えてもらった。

 お姉ちゃんはマナーが良さそうだけれど、他の4人は分からない。


 記録用ドローンがあるから横取りはできないと思うけれど、初の公共ダンジョンで宝物の取り合いなんてしたくない。


「あの、ごめん、いそがしく宝物を探しているのに悪いのだけれど、お礼がしたいから、手を止めてくれないかな?」


 お姉さんが遠慮がちに声をかけて来た。


「普通は、宝物は早い者勝ちだけれど、命を助けてもらった場合は別だよね?」


 僕は念のためにお姉さんたちに確認しておく。

 お姉さんたちの記録用ドローンに細工がしてあったとしても、僕のドローンに記録が残れば大丈夫だから。


「そうね、それは私も知っているわよ。

 それとね、仮免許用のダンジョンの地下2回程度では、ろくな宝物がないのよ」


 お姉さんはダンジョンにくわしくないようだ。

 それとも、普通の冒険者は、イレギュラー後に地下深くのお宝が移されるのを知らないのか?


「教えてくれてありがとう、でも、僕は自分の信じる方法で宝物を探すよ。

 お礼がしたいと言うのなら、その子たちを連れてどこかに行って」


「……分かったわ、命の恩人のじゃまにならないようにするわ」


☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪のライブ動画


雷伝五郎:なんだ? リツイート見て来たけれど、本当に子供が亜竜と戦っている!


ゆうご:そうなんだ、すでに地亜竜を1頭倒している。


雷伝五郎:うそだろ、そんなこと常識的にありえない!


ノンバア:いや、いや、いや、本当だ!

    :同時視聴できるのなら、追っかけ再生で確かめてみろ!


豚キムチ:みゆき姫の名誉にかけて本当だ、地亜竜を倒した後だ!


みゆき命:くっ、俺がおとりになりたかった、なぜ俺があそこにいない!


Kenneth:お前があそこにいても、おとりにもならないよ!


Rafael:アメリカ人に同意するのは腹立たしいが、お前がいてもムリ!


Alban:そんな事よりもなぜ誰も助けに来ない、協会に伝わっているだろう?!


Benno:男の子の付添人はタカラブネファミリーだぞ、S級だぞ!

   :こんなダンジョンの警備員よりもはるかに強い。


藤河太郎:そうだよな、タカラブネファミリーの付添人が助けに入らない。

    :男の子なら水亜竜くらい倒せると分かっているからだ。


みゆき命:本当に倒しやがった!


Kenneth:ありえない、クレージーだ、こんな小さな子が水亜竜を倒すだと?!


Rafael:倒して直ぐにまた隠し扉を探し始めやがった。

  :タカラブネファミリーのくせに、地下2階に宝物がない事を知らないのか?


みゆき命:まて、免許を取るためなら、基本動作を記録しているのではないか?


豚キムチ:なるほど、この記録映像を見せたら免許が取れる。

    :戦闘力だけじゃなく、基本もできている証明になるな。


ノンバア:おい、まて、あれはなんだ、今隠し扉から取り出したのは金か?!


Kenneth:バカ言え、地下2階に金が出る訳がない!


Rafael:いや、アメリカ人はうそつきだ、あれは金で間違いない!


Benno:そんなバカな、あの隠し扉はさっき確認して空だったぞ!


豚キムチ:うそをつくな、一度開けて空だった所になぜ宝物がある?!


みゆき命:おっかけ再生だ、同時視聴できる奴、確かめてくれ!

 

★★★★★★


 作者です。


 作品を読んでいただきありがとうございます。


 作品フォローや⭐︎評価が作者のモチベーションに繋がります。


 作品フォローと☆評価をお願いします。


 <(_ _)>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る