1009 妖怪「栗、いらんかねぇ」

 みなさま、こんばんは。

 宮草です。


 秋ですね。


 秋になると、この妖怪が現れます。


 我が家には、栗の木があります。二階建ての家の高さを超える、大きな栗の木です。しかも三本。


 秋になると、たくさんの栗が地面に落ちてきます。日々、家の者とともに栗拾いをしています。栗が大量に収穫できます。


 この栗を消費するため、我が家は妖怪「栗、いらんかねぇ」に化けるのです。


 我が家はあまり近所づきあいをしていないのですが、この季節だけはやけに友好的になります。家の者は袋にいっぱいの栗を入れて、隣のお宅へ。


「栗、いりませんか?」


 私もこの時期になると、友人や職場の人に狙いを定めます。


「栗、いりませんか?」


 嬉しそうに「ほしい」と言ってくれた人には、もれなく大量の栗が送られます。


「えっ、こんなにいいの!?」

「いいんですいいんです。受け取ってください」


 笑顔で言って、栗を渡していきます。


 昔、どこかで聞いたのですが、もらって嬉しくないお裾分けの一位が栗だそうです。お分かりのとおり、あの硬い皮をむくのは一苦労です。


 我が家では家の者が、暇があるとテレビを見ながら栗をむいています。それでも、大量に実る栗の消費には追いつけません。


 なので、我々は栗を収穫するたびに、めぼしい相手を見つけては、笑顔を貼り付け、「栗、いらんかねぇ」とお裾分け(押しつけ)をしているのです。


 実は栗、相手に渡すまでの間も、作業があって大変なんです。栗って、意外に虫がついているんですよね。あの硬い皮の中にどうやって入るのか謎ですが、虫が入り込んで中身を食べています。虫のいる栗といない栗を選別する作業が必要なんです。


 まず、拾ってきた栗を広げた紙の上に一個ずつ置いていきます。一晩経つと、虫の入った栗は、小さな穴の中から虫のフンが出てきます。栗の周りや紙の上にフンがあったら、その栗は取り除きます。こうして、虫のいない栗だけを選別して、他人にお裾分けをします。


 この作業、もう四回くらいやったような。まだまだ栗は実っているので、我が家のお裾分け攻撃は続きそうです。


 家には大量の冷凍栗もストックされるので、栗の消費レシピも考えないといけないんだった。


 みなさんのところにも、「栗、いらんかねぇ」とやってくる人がいましたら、ご注意ください。


 ではでは~。




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