第22話 ユイカ先生

 魔法学院では、もうすぐ始まる前期末考査に向けて、皆準備をしている。皆ピリピリしているの。別にこれで落第が決まるわけでもないのに、皆真剣そのものだわ。


 私も、前期試験に向けて、勉強を始めたわ。落第するわけにはいかないもの。


 ふと横を見ると、テルースは、変な目で、私を見ているわ。そして、思いつめたように、私に声を掛けてきたの。


 「ユイカ、何故、そんなに、真剣に準備しているの?1番でも目指しているの?」


 「私は、合格すれば、それでいいの。1番なんて考えてもいないわ」


 「でも、入学試験は、1番だったんだよね」


 「そうよ。でも、それと今度の試験とは全く関係ないわ」


 「そうかなぁ。ここに入学する前から知っていたことが多いよ。特に、今は、初級講座しかないのだし、試験範囲は入学試験と同じじゃないの?」


 「テルースは、今までの演習が、本当に初級魔法だけだと、思っているの?」


 テルースは、今頃、何を言っているの?真面目に、授業を受けていないのかな?


 「えっ、違うの?でも、講座名はすべて初級とついているよ」


 「ねえ、考えて見てよ。入学試験で合格した人の中に、初級魔法ができない人っているの?」


 「それはいないよ。合格しているんだからね」


 「そうよ。初級魔法の試験にすでに合格しているのよ。その人たちに、もう一度、初級魔法の試験をする必要があるの?」

 

 「多分、ないと思う」


 テルースは、自分で、何も考えないのかしら。こんな、単純な事をびっくりしたように。しかも、『多分』って 、何よ。バカじゃないの。


 「何が、多分よ。絶対ないよ。だから、今度の試験に初級魔法なんて、出てこないのよ」


 「えー、そんなこと聞いていないよ」


 「皆、そう思っているわ。テルースぐらいよ。初級魔法しか、出題されないと思っているのは」


 「そうなんだ、だから、皆授業の復習を練習しているのか」


 「そうよ。だから、テルースも、のんびりしてないで、授業の復習をやりなさいよ」


 「でも、僕は、結構さぼって、うっ、休んでいたから。全部の講座は受けてないんだ」


 えっ、今、『さぼって』って言った?やっぱり、ズルしてたんだわ。少し、虐めたやりたくなったの。テルースのこの顔を見てると、つい、イライラしてしまう。どうしてか、わからないけど。


 「そうよね。だったら、私にお願いしなさい」


 「えっ、何をお願いするの?」


 「私は、すべての講座に参加しているのよ。全出席、つまり、皆勤よ」


 「だから、何?」


 「だから、授業の内容を教えて下さい、って言うのよ」


 「えっ、何て」


 「だから、『ユイカ、お願いだから、教えて下さい』って言うのよ。さあ、言って見なさい。『ユイカ、お願いだから、教えて下さい』」


 「ユイカ、お願いだから、教えてください。って言うのね」


 「余計な言葉をつけないの。はい、言って」


 「ユイカ、お願いだから、教えてください」


 「そうよ。やれば、出来る子ね」


 私は、テルースの頭をポンポンと叩いあげた。私の言うとおりにしてくれる。とても楽しく成って来たわ。


 「ユイカ先生、最初は、何をすればいいですか?」


 「そうね。テルースが休んでいた時の水魔法の2回目の授業をするね」


 「えっ、僕が休んでいた時をしっているの?」


 「すべて、控えているよ。だから、私の言うことを聞いてね」


 「はい、ユイカ先生」


 私は、その後も、テルースに、初級魔法の授業のを行っていったわ。何故か、今日のテルースは、私の言うことを聞いてくれる。だから、もっと、虐めたくなったの。

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