第58話 女王

「残念だが、お前の下に着く気は無いんだ」

楓美子は豚のお面を被ると、フゴフゴと鼻息を立てた。蛇はお面の周りをくるくると回ってどこかへ行ってしまった。楓美子はいつの間にか黒いタキシードのドレスマントに着替えていた。


「お前がバカで良かったよ、セルゲイ、いや、キング!この辺り一体はまるで砂漠じゃないか!」楓美子は豚のお面を外すと、前方の地面を凝視した。周囲から風が巻き上がり、無数の小さな砂嵐が周りを取り囲んだ。楓美子の金髪が上昇気流で舞い上がり、風でマントがバタバタと翻った。彼女は手のひらを下に向けて集中している。戦闘態勢だ。


「悪いけど砂漠で負けたことは無いんだ」

楓美子が手をキングにかざすと、小さな砂嵐がキングを取り囲み大きな竜巻へと姿を変えた。

「くらえ、サンドストーム!」轟音とともに巨大な竜巻がキングの体をさらって行った。キングは宙に舞い上がり姿が見えなくなった。

「キングは空中から落下して死亡だ、残念だったな、はっはっはっは」、楓美子の大きな笑い声が砂漠に響いた。



数分後、空からキングが降って来て、地面に落下し大きなクレーターを作った。楓美子はそろりとクレーターに近づくと、穴の奥からキングの声が響いて来た。

「仕方がない、俺の誘いを断るならば死んでもらうしかないな」、硬質化したキングは地面に落下しても死なないらしい。キングは穴から這い上がり、ダッシュで楓美子に距離を詰めると、格闘戦に出た。

「こ、これはセルゲイのウォッカタイム?」、楓美子はセルゲイのパンチがスケルトンの頭蓋骨を粉々に粉砕する光景を思い出した。セルゲイは楓美子の顔面にパンチを放った。ドーンと大きな音が響いた。楓美子の眼前に砂のマットが生じている。パンチの衝撃はマットの厚みに吸収されて無力化してしまった。「砂のオートガードを設定した、厚みはこんなもんか」、楓美子は余裕の表情で答えた。


しかし、スピードとパワーは明らかにキングの方が上だった。ドーンという衝撃音と共に楓美子は徐々に後退していった。

「くっ、しつこいな」、楓美子は明らかに嫌がっている。どうやら砂のマット越しに衝撃波が伝わっているようだ。

強烈な蹴りが楓美子の腹部に飛んできた。一段と大きな音が砂漠に鳴り響いた。砂のマット越しに衝撃が伝わると、楓美子は砂漠にひざまづいてしまった。


「残念だったな、これでとどめだ」、キングはエックスカリバーを取り出すと、ソードを一閃した。ニューヨーク五番街を破壊した閃光が楓美子を襲った。今度は楓美子の姿が大地から消えてしまった。


「さようなら楓美子、今度生まれ変わったら豚にでも転生するんだな」

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