第45話 余興

9 余興


モニターではジャックたちが最上階に上がると同時に銃撃が始まり、ホコリがまって周りが見えなくなった。しばらくの間銃撃が続いた。テーブルが飛んで窓ガラスが割れた。ホール内では歓声が上がっている。


銃声が止んでホコリが晴れてくると、客席ではウワッと驚きの悲鳴が上がった。ジャックが血まみれになっている。それから黒服の者たちが怪しいロシア人たちに投げ飛ばされている。客席ではざわざわと声が上がった。「よしっ、私は小さくガッツポーズした」。


「これは予想外だ、なかなかやりますね。」新社長はそう言うと、手に持っていたスイッチをグッと握った。突如、ジャックの表情が変化しまるで猛獣のように鋭い気迫がモニター越しに伝わってきた。

「ダメだ、逃げて!」、私がそう言うのと同時にジャックは一気に距離を詰めてボルタに回し蹴りを放った。次の瞬間、ボルタは窓際に吊るされていた。客席からまたしても歓声が上がった。ボルタがジャックの手を逃れてビルの下に落ちていくと、客席は拍手と笑い声に包まれた。


「我が社の脅威は取り除かれました、皆さん明日から安心ですよ」。新社長がそう言うと、みんなは料理を食べに戻った。ジャックは黒虎に乗ってビル郡に消えていった。



新社長の話を聞いていると何だか頭がぼーっとして眠くなってきた。客席でも至る所で寝落ちした女性が男性におぶられている。違う部屋へ運ばれていくみたいだ。中には会場で複数の仮面の男に囲まれた女性もいる。身動きの取れない彼女たちはテーブルの上に体を乗せられている。宙に投げ出された綺麗な足が揺れている。


モニターを見ると、ジャックがビルの屋上のヘリポートで巨大なスピーカー装置を運転していた。彼が手にしたUSBメモリを装置に挿すと、一瞬ニューヨークの街が真っ暗になった、停電したようだ。それからブーンとした耳鳴りがモニター越しに聞こえてくると何だかムズムズとしてきた。ひょっとしてあれは文書の力を利用しているのか。


花の前に仮面をつけた男が近寄ってきた。仮面の男が指をさすと、悪魔のコスプレをした男が花のファーを剥ぎ取って、そのまま花の体を担いでいこうとした。私は花の手を掴むと必死に手繰り寄せようとするが、眠くて体に力が入らない。もう一人の男が後ろから私を羽交い締めにして花と引き離そうとした。


「やめて、連れて行かないで!」、私がそう言うとエマの目がキラーンと光った。エマの指にはめたシルバーアクセが鋭いナイフ状に変化し男の腕を切りつけた。


「私のかな先輩に触るんじゃない!」、エマがキレた。

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