第14話 教会
このテープは一体なんなのか?何故みんなが騒いでいるのか直ぐには理解できなかった。とにかく、今から一人でテープの中身を見るように指示された。僕はテープをレコーダーにかけてみた。再生ボタンを押すと変な音楽が流れてきた。これは、、曲というよりは、、、ノイズ? なんとなく不気味な音だ。うっ、気分が悪いぞ。しばらくすると画面に一人の男の姿が映った。黒い服を着て椅子に座り顔には鬼の面を付けている、鬼面だ。
「君はボルタ・レン君だな、初めまして、君のことを調べさせてもらった。今度君の力を借りたいと思っている。ゲームのことは分かっているな。今晩20:00に一人で広場の教会へ来てくれ。特殊な任務を伝えよう。報酬ははずむよ」。
そう言うとテープは砂嵐の画面に変わった。どうやら内容は以上のようだ。部屋に戻るとみんなは散開していた。遠くで牧田の視線を感じたが、こちらを見ると歩いて向こうへ行ってしまった。一体なんだと言うのだろう?
家に帰りゲームの世界に入った。広場に集まっているとみんながガヤガヤと騒いでいる。10人はいるだろうか。輪の中心にいるのは、橅本だ。
「橅本先輩、あれやってください!」輪の中の一人、もとい舎弟が声を上げると、「スプリットファイヤー!」と大声で詠唱した橅本の右腕から炎が3方向に分かれて射出された。炎は木にぶつかり大きな炎を上げた。
あの事件以来、橅本は後輩たちから会社の英雄として尊敬を集めている。鬼面を始め多くの敵(上司)を炎で倒した彼は一気に200ポイントを獲得し、能力を申請した。彼の得た能力は炎を操る能力だ。手からいろんな形に炎を射出することができる。炎の強さは彼の精神力によって左右されるらしい。
「おおー、ボルタ、君も来てたのか!お互い頑張ろうぜ!」、橅本は僕を見かけるとそう言葉を残し、舎弟達を連れてレストランへ向かった。
「死ね、変態野郎!」、舎弟の一人が僕を見かけて言葉を放った。ゲームでセクシーショットを集めていることが公にバレてしまった僕は変態のポジションに落とされてしまった。そんな僕はゲーム内でも、社内でも、立場が危うくなってしまった。もはやこのゲームは橅本たちの所有物だといっても過言ではない。
ゲームが始まると、僕は一人で広場の奥にある教会へと向かった。あと10分で約束の時間だ。教会には僕の他に2人来ていた。
黒いボンテージ姿にハーフパンツの金髪女が腰にチェーンを巻いている、楓美子さんだ。彼女は僕に気付くとドキッとした表情をして後ろずさった。
「な、なんでお前が呼ばれるんだ!」、知るか、余計なお世話だ。内心そう思いながら僕は距離を置いて席に座った。
少し前の席にもう一人座っている。フードを被った銀髪の男が手を組んで神に祈っている。どこかで見たような顔だが、あ、あれは昼間の雑誌で見たロシア人では。なぜこんなところに彼が呼ばれたんだ。
「こんにちは、君もこのゲームに参加していたのか?」僕が声をかけると、セルゲイは何も言わずに顔を伏せて姿勢を崩さない。たぶん、僕は邪魔なんだろう。あるいは気付かなかったのかもしれない。
そろそろ時間だ。教会の奥の扉が音もせず勝手に開いた。階段が下に続いている。これを降りてこいということか。僕らは階段を使って下の階へと降りていった。
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